教員間におけるいじめと損害賠償義務
報道によりますと,神戸市東須磨小学校の教員間で,
悪質ないじめが繰り返されていたことが明らかになりました。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201910/0012774681.shtml
いじめの内容としては,「ボケ」,「カス」などの暴言を浴びせる,
コピー用紙の芯で尻を叩く,
ラインで別の女性教員にわいせつなメッセージを無理やり送らせる,
被害者の教員の車の上に乗ったり車内で飲み物をわざとこぼす,
激辛カレーを無理やり食べさせるなど,
耳を疑うような凄惨ないじめ行為が教員の間で実施されていたようです。
いじめ防止対策推進法8条には,学校の教職員の責務として,
いじめ防止及び早期発見に取り組むとともに,
いじめに対して適切かつ迅速に対処することが規定されています。
生徒のいじめを防止しなければならない立場にある教員が,
凄惨ないじめをしていたという事実に,
多くの人がショックを受けたと思います。
さらに,校長が加害者を口頭で指導しただけで,
懲戒処分をしなかったこと,
教育委員会も十分な調査をしなかったことも,
通常の組織ではありえず,学校という組織は,
どこか世間からずれているような気がします。
パワハラの定義が法律に明記され,企業に対して,
パワハラ防止措置義務が課されるようになり,
パワハラを防止していこうという世の中の動きがあるのに,
それに逆行していることに驚きを隠せませんでした。
さて,このようないじめがあった場合,
加害者は責任をとらなければなりません。
具体的には,被害者に対して損害賠償を支払わなければなりません。
おとなのいじめ問題について,
東京都ほか(警視庁海技職員)事件の
東京地裁平成20年11月26日判決
(労働判例981号91頁)が参考になります。
この事件では,警視庁管内の警察署において,
上司達が特定の部下に対して,
次のようないじめ行為をしました。
「この野郎,ぶっ飛ばすぞ」といいながら,
ネクタイを引っ張って転倒させられた。
職場に「欠格者」,「この者とは一緒に勤務したくありません」
と記載された被害者の顔写真付ポスターが掲示された。
被害者は,有機溶剤に対するアレルギー体質があったところ,
被害者のロッカーにシンナーが撒布された。
拡声器で「税金泥棒,やめちまえよ」と侮辱された。
つばを吐きかけられた。
火のついたタバコを当てられた。
これらの行為は,被害者を退職に追い込むためになされたもので,
違法な退職強要,嫌がらせに該当するとして,
慰謝料270万円の損害賠償請求が認められました。
大人がいじめをすれば,被害者に対して,
損害賠償を支払わなければならなくなります。
いじめは,子供の世界だけではなく,
大人の世界でも行なわれているという現実があり,
悲しくなります。
社会全体からいじめが撲滅されることを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。