企画業務型裁量労働制の争い方2~労使委員会~
昨日のブログでは,企画業務型裁量労働制の争い方として,
対象業務や対象労働者の要件が厳格に規定されているので,
対象業務や対象労働者に該当するかを
しっかりとチェックしましょうと記載しました。
本日は,昨日に引き続き,企画業務型裁量労働制の争い方のうち,
手続的要件を争う方法について解説します。
企画業務型裁量労働制を導入するためには,会社に,
労使委員会を設置して,法律で定められた7つの項目について,
労使委員会の委員の5分の4以上の多数による議決で決議し,
かつ,そのその決議内容を労働基準監督署へ届け出る必要があります
(労働基準法38条の4)。
労使委員会とは,賃金,労働時間その他の当該事業場における
労働条件に関する事項を調査審議し,事業主に対し
当該事項について意見を述べることを目的とする機関です。
労使委員会は,労働者側の委員と会社側の委員で
構成されているのですが,労働者側の委員は,
労働組合か労働者代表者から任期を定めて指名を受けた者
である必要があり,労使委員会の委員の半数以上を占める必要があります。
労使委員会の労働者側の委員が適正に選出されていなければ,
労使委員会の決議が無効となり,
企画業務型裁量労働制が無効になる可能性があるのです。
労使委員会の開催の都度,議事録が作成されなければならず,
議事録は3年間保存されなければならず,
その議事録は,労働者に周知されなければなりません。
議事録の労働者に対する周知がされていなければ,
労使委員会の決議が無効になる可能性があります。
そして,企画業務型裁量労働制の対象労働者に不利益にならないように,
労使委員会において決議を適切に行うためには,
労働者側委員に対して,その判断の基礎となる
十分な情報提供がされなければなりません。
そのため,会社は,労働者側委員に対し,
対象労働者に適用される評価制度及び賃金制度の内容を十分に説明し,
対象業務の具体的内容,実施状況に関する情報として
対象労働者の勤務状況,健康福祉確保措置の実施状況,
対象労働者からの苦情の内容及び処理状況など,
労働基準監督署への報告の内容を開示すべきなのです。
その上で,労使委員会は,次の7つの項目について決議します。
①対象業務
②対象労働者の範囲
③1日のみなし労働時間
④健康及び福祉確保措置
⑤苦情処理措置
⑥労働者の同意を要すること,不同意労働者への不利益取扱の禁止
⑦決議有効期間,記録保存期間
そもそも,労働者には,労使委員会の設置に
応じなければならない義務はありませんので,
企画業務型裁量労働制の導入に反対する場合には,
労使委員会の設置に応じなければよいのです。
また,労使委員会が設置されたとしても,
労使委員会の委員の5分の4の多数による議決が必要なので,
労働者側の委員は,会社からの説明を聞いて,
労働者にとってデメリットが大きいと判断すれば,
遠慮なく,ノーと言えばいいのです。
そうすれば,労使委員会の委員の5分の4以上の議決は得られず,
企画業務型裁量労働制の導入を阻止することができるのです。
このように,企画業務型裁量労働制は,
労働者がはっきりとノーと言えば,
導入を防止することが十分可能な制度なのです。
長くなりましたので,続きは,また明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。