会社は給料から親睦会費を勝手に天引きしてもいいのか
会社の給料から親睦会費として毎月3,000円が
天引きされているにもかかわらず,親睦会が多くあるわけでもなく,
親睦会費の残高が多くなっています。
また,労働者は,入社時点で親睦会費が給料から
天引きされることに合意したことはなく,退職時に,
親睦会費は1円も返還されない運用になっています。
このような親睦会費が給料から天引きされることは,
労働基準法に違反していないのでしょうか。
結論としては,労働基準法24条1項に違反しています。
労働基準法24条1項には,
「賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。」
と規定されています。
この賃金の全額を労働者に支払わなければならないことを,
賃金全額払いの原則といいます。
労働者は,働いて賃金を取得することで
生活を成り立たせているため,
会社からもらう賃金が勝手に控除されてしまえば,
手元に残る賃金が減ってしまい,生活が苦しくなることから,
賃金は全額支払われなければならないのです。
もっとも,この賃金全額払いの原則には例外があります。
例外の1つは,法律で賃金からの控除が認められているものです。
具体的には,所得税法で認められている給与所得税の源泉徴収,
厚生年金保険法・健康保険法,労働保険徴収法
で認められている社会保険料の控除,
勤労者財産形成促進法で認められている財形貯蓄金の控除です。
もう一つの例外は,過半数労働組合
(それがない場合は労働者の過半数代表者)
との書面による協定がある場合です。
具体的には,チェックオフ協定
(労働組合と会社間の協定に基づき,
会社が組合員である労働者の賃金から組合費を控除し,
これを一括して労働組合に引き渡すこと)があります。
このように,法律や労使協定がないのであれば,
賃金から何かの名目で控除することはできないのです。
また,労働基準法18条には,会社は,労働者に対して,
労働契約と一緒に貯蓄の契約をさせたり,
貯蓄金を管理する契約をしてはならないことが規定されています。
会社が,労働者の貯蓄金を,労働者の委託を受けて
管理する場合には,労使協定を締結して,
労働基準監督署へ届出なければなりません。
労働者が貯蓄金の返還を会社に請求した場合,
会社は,貯蓄金を返還しなければならず,
会社が貯蓄金を返還しなかった場合,
労働基準監督署が会社に対して,
貯蓄金の管理の中止を命ずることがあります。
このように,労使協定がないのに,
賃金から親睦会費を天引きすることは,
労働基準法18条,24条に違反して無効です。
労働者は,会社に対して,
親睦会費の返還を求めることができますし,
会社が親睦会費の返還に応じてくれないのであれば,
労働基準監督署に行政指導してもらうべきです。