給与規程変更による給与の減額に伴い退職金が減額された事件
被告学校法人において,給与規程によって給与が減額され,その結果退職金が減額されたことから,原告らが差額退職金の支払を請求した事件において,労働者が敗訴しました(大阪地裁平成28年10月25日・判例時報2340号106頁)。
労働者の給与といった重要な労働条件を変更するには,原則として,労働者の同意が必要になります。例外的に,労働者の同意がない場合であっても,就業規則を変更することで労働条件を変更できます。その際には,①労働者の受ける不利益の程度,②労働条件の変更の必要性,③変更後の就業規則の内容の相当性,④労働組合等との交渉の状況等が総合考慮されて,労働条件の変更が有効か無効か判断されます(労働契約法9条,10条)。
本件では,①退職金が約270万円から約424万円の減額となっており,労働者の受ける不利益の程度は大きいと判断されました。
しかし,②被告学校法人は,役員報酬の減額,定期昇給の停止,手当の削減,希望退職募集等の措置を講じたものの人件費の支出が多く,入学者が減少しており,私学共済財団に借入を拒否されたことから,経営状況は危機的であり,変更の必要性が認められました。
そして,③基本給の減額は段階的に行われる等の激変緩和措置がなされており,内容の相当性が認められ,④被告学校法人は,7年前から労働組合に対して財務情報を適宜提示し,交渉においても柔軟な対応をしてきたことから,総合考慮の上,給与の減額という労働条件の変更は有効となり,原告が敗訴しました。
労働者側が敗訴した事件ですが,就業規則の変更で労働条件を変更する際に,どのような事実をどのようにあてはめていくかについて参考になりますので,紹介しました。