ほっともっとの店長は管理監督者か?
ほっともっとの元店長が未払残業代を請求したところ,会社は,元店長が労働基準法41条2号の管理監督者に該当するため,未払残業代を支払わなくてもよいと反論して争ったプレナス事件(大分地裁平成29年3月30日判決・労働判例1158号・32頁)を紹介します。九州労働弁護団の玉木正明先生がご担当した事件です。
労働者が,労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当した場合,会社は,労働者に対して,未払残業代を支払わなくてもよくなりますので,「店長」等の肩書が付いている労働者が,未払残業代を請求すれば,会社は,管理監督者なので残業代を支払いませんと主張して,争いになることがよくあります。しかし,マクドナルドの名ばかり管理職で問題になったように,「店長」等の肩書を付けただけで,管理監督者にできるほど簡単な話ではなく,裁判所は,管理監督者に該当するか否かについて厳格に審査しており,会社が敗訴することが多いです。
プレナス事件の判決では,管理監督者に該当するか否かについて,「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを,職務内容,責任と権限,勤務態様及び賃金等の待遇などの実態を踏まえ,総合的に判断すべきである。」という判断枠組みが示されました。
そして,原告である元店長の職務内容,責任と権限について,店長として店員の採用する権限はあっても,採用にあたっての時給の決定や,その後の昇給,雇止めや解雇については,本部の人事担当者と相談する必要があり,月間売上目標が定められていて,店舗の営業時間を自由に決定できないことから,主体的な関与は乏しく,会社の経営に関わる重要な事項に関与していないと判断されました。
次に,原告である元店長の勤務態様について,店員が不足する場合には,自ら弁当の調理・販売を担当して,連日長時間働いていたことから,労働時間に関する裁量は限定的であり,勤務態様が労働時間の規制になじまないものではないと判断されました。
そして,原告である元店長の賃金等の待遇について,店舗管理手当が支給されていたものの,年収約474万円で,会社の平均年収約528万円を下回っており,月300時間を超過する実労働時間となっている月が13回に及んでいる勤務実態から,厳格な労働時間の規制をしなくても,その保護に欠けることがないといえるほどの優遇措置が講じられていたとはいえないと判断されました。
その結果,原告である元店長は,管理監督者ではないと認定され,会社に対して,合計約1011万もの未払残業代の支払いが命じられました。管理監督者を否定した判決で,労働者が有利に利用できることから,紹介させていただきます。