結婚前に夫婦のトラブルを回避するための結婚契約書・婚前契約書
読者の皆様は,結婚契約書または婚前契約書をご存知でしょうか。
結婚契約書または婚前契約書とは,結婚前に,
夫婦の財産のことや夫婦間でトラブルが発生した場合
の対処方法などを,結婚する相手との間で定めておくものです。
具体的にどのようなことを契約書に記載するのかといいますと,
①結婚後の生活費の負担,家計の管理,
結婚前から保有する財産の帰属など結婚後のお金に関すること
②不倫を予防するために,不倫があった場合には,
いくらくらいの慰謝料を支払うことや,
離婚の協議を開始するといったように,
夫婦間のトラブル対処方法
③家事や育児の分担に関すること
④親族や友人との付き合い方
など,さまざまなことを取り決めることができます。
もっとも,③家事や育児,④親族や友人との付き合い方については,
取り決めをおこなっても,相手に強制することはできませんので,
あくまで努力義務になります。
そこで,実務上重要になるのが,
①お金に関すること,②夫婦間のトラブル対処方法です。
①お金に関することについては,
夫と妻のどちらが家計を管理するのか,
家計にいくらいれるのか,
といったことを結婚前に決めておくことで,
家計の管理が円滑になります。
その他に,相手に給料明細を開示することも決めておけば,
相手の収入がいくらなのかが分かり,
不測の事態に対処しやすくなります。
夫のお小遣いについて,ガチガチに決めてしまうと,
夫の交流の機会が減少して,
夫の不満が増える要因になりますので,
あえて契約書には書かずに,
その時々の話し合いで決めた方がいいと考えます。
夫は,ときには後輩におごらないといけないとき
がありますので,ある程度のお小遣いは必要なのです。
さて,結婚契約書または婚前契約書が威力を発揮するのは,
②不倫などのトラブルが発生したときです。
例えば,結婚契約書または婚前契約書に,
不倫をした場合には,慰謝料300万円を支払う
と取り決めをしていた場合,いざ,不倫が発生した場合,
慰謝料の金額をいくらにするのかでもめなくて済みます。
不倫の慰謝料は,
①結婚の長さ
②不倫の長,
③不倫当時の夫婦間の関係
④不倫に至る経緯
などの事情を総合考慮して,最終的には裁判所が決めます。
不倫の慰謝料は,おおむね100~200万円くらいなのですが,
最終的には裁判所が決めますので,実際にいくらになるかは,
裁判をしてみないと分からないのです。
結婚する前に,不倫をした場合の慰謝料の金額を決めておけば,
結婚契約書または婚前契約書が重要な証拠となって,
相手に対して,スムーズに慰謝料を請求できます。
さらに,相場より高額な300万円ほどの慰謝料金額
を設定ておけば,不倫の予防になります。
とはいえ,結婚前に,不倫した場合にはいくら支払う
などについて話し合うのは,相手を信頼していない
ようにも捉えられてしまい,結婚前に交際が
破局するリスクがあると考えられます。
そのため,結婚契約書または婚前契約書は,
それほど作成されていませんでしたが,
今は3組に1組が離婚する時代ですので,
結婚前の幸せな時期に,
結婚契約書または婚前契約書を作成するかは別にして,
2人の将来のことを真剣に話し合うのは重要なことです。
結婚後には,様々な利害対立が生じていて,
夫婦間で決めごとをしにくいので,
結婚前に,自分と相手を見つめ直す機会があった方がいいと考えます。