追い出し部屋に異動させられたときの対処法

1 追い出し部屋とは

 

 

先日、追い出し部屋に関する法律相談を受けました。

 

 

会社からの退職勧奨を断ったところ、

ある日、会社から、倉庫で働くように指示を受けたものの、

倉庫での仕事はほとんどなく、

精神的に辛いという、法律相談でした。

 

 

このように、もともとの仕事よりもずっと程度の低い仕事を与え、

労働者の自尊心を傷つけて、退職に追い込むやり方を追い出し部屋といいます。

 

 

 

特定の労働者を窓際に追いやり、干すという手口です。

 

 

追い出し部屋については、パワハラの6類型である、

人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、

過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い

仕事を命じることや仕事を与えないこと)に該当するため、

最近ではあまり聞かれなくなっていました。

 

 

そのため、このように、露骨に、

労働者を退職に追い込むためのパワハラが行われている実態を知り、

驚きました。

 

 

本日は、追い出し部屋の対処法について検討してみます。

 

 

2 追い出し部屋への配転命令が争われた裁判例

 

 

追い出し部屋について、参考になる裁判例を紹介します。

 

 

新和産業事件の大阪高裁平成25年4月25日判決

(労働判例1076号19頁)です。

 

 

この事件では、営業課長をしていた原告の労働者が、

倉庫への配転命令を受け、課長職を解く降格命令を受けて、

給料が半額に減額されたことから、

配転命令の無効確認や損害賠償請求をしました。

 

 

倉庫への配転命令が実施される前に、会社は、原告に対して、

退職勧奨が繰り返されていましたが、原告は、

退職に応じなかったという事情がありました。

 

 

倉庫での仕事については、もともと1人の従業員か担当していたところ、

原告を追加して2人の従業員を配置するほどの業務量はなく、

実際に、原告の仕事はほとんどありませんでした。

 

 

そのため、裁判所は、原告に対する倉庫への配転命令について、

原告が退職勧奨を拒否したことの報復として、退職に追い込むために、

または、合理性に乏しい大幅な賃金の減額を

正当化するために実施したものであり、業務上の必要性はなく、

不当な動機・目的によるもので、原告の不利益が大きいので、

権利の濫用に該当するとして、無効と判断されました。

 

 

そして、原告に対して、50万円の慰謝料が認められました。

 

 

この裁判例のように、追い出し部屋への配転命令が

権利の濫用であるとして、争う方法があります。

 

 

3 追い出し部屋はパワハラに該当する

 

 

もう一つは、追い出し部屋への配転命令が、前述した、

人間関係からの切り離しや過小な要求に該当する

パワハラであると主張して、会社に対して、

損害賠償請求をする方法があります。

 

 

 

パワハラを防止することが法律で明記され、

パワハラ防止指針が整備された今であれば、

パワハラの損害賠償請求が認められやすくなるかもしれません。

 

 

もっとも、追い出し部屋の事案では、

他の従業員から隔離されていたり、

仕事が与えられていないことを、

どのようにして立証するのかという難しい問題があります。

 

 

この点、倉庫などで一人でいて仕事がない状況を動画で撮影して、

立証するのがいいと思います。

 

 

スマートフォンなどで、一日中、

自分の倉庫での仕事の状況を撮影すれば、

仕事がないことを立証できます。

 

 

そして、従前の自分の仕事の状況を、

日報やメールなどで証明できれば、

いかに倉庫での仕事がなにもないかが明確になります。

 

 

仕事がないことの動画を確保できれば、会社に対して、

倉庫で仕事をさせないことがパワハラに該当するとして、

弁護士が交渉し、場合によっては、裁判手続をすれば、

損害賠償請求できる可能性があります。

 

 

追い出し部屋に異動させられた場合には、

労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

追い出し部屋は、労働者の尊厳を傷つけるものでするで、

早急になくす必要があると考えられます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。