未払残業代を含む賃金債権の消滅時効が3年になります

1 賃金債権の消滅時効

 

 

先日,未払残業代を含む賃金債権の消滅時効の期間が

2年から延長されることで労働政策審議会

の議論が進んでいることについて,ブログで紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201912268874.html

 

 

公益委員が示した案は,賃金債権の消滅時効を,

改正民法にあわせて,5年とするものの,

当分の間,3年とし,改正から5年経過後に施行状況を勘案しつつ,

検討を加えるというものでした。

 

 

 

そして,12月27日,厚生労働省は,

この公益委員の意見を受け入れて,

年明けの通常国会に労働基準法改正案を提出し,

2020年4月からの改正民法の施行に間に合わせるようです。

 

 

あっという間に,進んでしまい驚きました。

 

 

2 賃金債権の消滅時効は5年にすべき

 

 

先日のブログにおいて,私は,改正民法に合わせて,

賃金債権の消滅時効を5年にすべきと主張しました。

 

 

もともと,賃金債権は,現行民法において,

1年の短期消滅時効が適用されていましたが,

賃金債権は,労働者の生活の糧となる重要な債権であることから,

労働者を保護する観点から,労働基準法で

2年に消滅時効が延長されたという経緯があります。

 

 

そのため,改正民法の消滅時効が5年に統一される中,

労働者を保護するための労働基準法において,

改正民法の5年よりも短い2年の消滅時効にしておくことは,

根本的に矛盾が生じてしまいます。

 

 

だから,改正民法の施行にあわせて,

賃金債権の消滅時効を5年にすべきなのです。

 

 

今回,政治的な妥協の産物として,

賃金債権の消滅時効が3年になったことについて,

非常に残念に思います。

 

 

労働基準法に違反して賃金の支払を怠っているにもかかわらず,

その支払を免れるための使用者側の居直りを受け入れたものであり,

到底納得できるものではありません。

 

3 消滅時効を中断するには

 

 

とはいうものの,現実には,賃金債権の消滅時効は

3年に延長されることになりそうなので,

これに対処する必要があります。

 

 

労働基準法が年明けの通常国会で改正されて,

2020年4月1日から施行されれば,

2020年4月以降に発生する賃金債権の消滅時効は

2023年4月以降まで消滅時効にかからなくなります。

 

 

賃金債権は,毎月発生して,

時効期間が経過するごとに消滅していくので,

2020年4月の賃金債権は,

2023年4月で消滅時効にかかり,

2020年5月の賃金債権は,

2023年5月で消滅時効にかかります。

 

 

この消滅時効をとめるためには,

賃金債権を会社に請求する必要があります。

 

 

 

具体的には,「2017年12月から2019年12月までの

未払残業代を含む全ての未払賃金を請求します。」などと書いた文書を,

特定記録郵便で会社に郵送します。

 

 

ポイントは,未払賃金の金額を記載する必要はなく,

請求する期間を特定することです。

 

 

FAXやメールでこの文書を送っても大丈夫です。

 

 

ようは,この文書が会社に届いたことを後から証明できればいいのです。

 

 

 

この文書が会社に届けば,

消滅時効の完成が6か月間猶予されるので,

その間に会社と交渉をします。

 

 

6か月間で会社との交渉がまとまらないのであれば,

6か月間以内に裁判か労働審判を提起することで,

消滅時効は完全にとまります。

 

 

請求書をだしただけでは,消滅時効の完成を猶予する効力しかなく,

6ヶ月以内に裁判などを提起しなければならないことを忘れないでください。

 

 

ブラック企業被害対策弁護団が作成したこちらの動画をみれば,

賃金債権の消滅時効と時効の中断について,

おもしろおかしく学べることができるので,

一度みてみてください。

 

 

 https://www.youtube.com/watch?v=2AwRdwRBHNE&feature=youtu.be

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。