ワークルール教育
昨日,金沢大学法学部の法実務入門
という講義の1コマ90分の時間で,
大学1年生に対して,労働法の講義をしてきました。
ブラックバイトとブラック企業の実態から,
労働法の知識を身につけてもらいたいと考えて,講義をしました。
今からさかのぼること10年前,
2008年のリーマンショックによって景気は一気に冷え切り,
派遣切りが横行して,多くの労働者の仕事が奪われました。
そして,2008年の年末にショッキングな映像が流れました。
年越し派遣村です。
派遣切りにあった多くの労働者が,若者も含めて,
日比谷公園の炊き出しに行列を作っていたのです。
(http://www.asahi.com/special/08016/TKY200812310157.htmlより抜粋)
あの映像を見た多くの若者はこう思ったに違いありません。
派遣社員になったらだめや,正社員にならなきゃ。
このように,年越し派遣村の映像を見て,
若者たちやその親も,正社員になることを強く望んだのです。
しかし,リーマンショックで景気は冷え込んでいましたので,
企業はなかなか正社員を雇用したがらず,
調整弁としての非正規雇用労働者を増やしていきました。
そのため,若者たちは,少ない正社員のいすを
奪い合うことになりました。
ここに目をつけたのがブラック企業です。
ブラック企業は,正社員という甘い罠をしかけて,
詐欺的な求人を見て応募してきた若者を大量に雇用します。
ブラック企業に就職すると,正社員とは名ばかりで,
昇給も賞与も退職金もなく,残業代なしで長時間労働を強いられます。
ブラック企業は,使えないと判断した労働者に対して,
意図的に組織的にパワハラを行い,
労働者を精神障害に罹患させて,
自己都合退職に追い込みます。
会社は,労働者を簡単には解雇できないので,
労働者から自己都合退職させれば,
労働者は会社を辞めることを争えなくなるので,
ブラック企業は,労働者を自己都合退職に追い込むために,
パワハラをしてくるのです。
ブラック企業に使えると判断された労働者は,
その後も長時間労働が継続し,
いずれは精神を病んでしまうのです。
まさに,辞めるも地獄,辞めないも地獄なのです。
こうして,使い潰される若者が増加し,
ブラック企業は,社会問題となったのです。
若者がブラック企業のえじきにならないためには,
労働法の知識を身に着けて自分の身を自分で守るしかありません。
そのため,高校生や大学生が社会に出る前に,
ワークルールを勉強してもらう必要があると考えています。
昨日の講義では,大学生に対して,次のことを伝えました。
仕事でミスをしたことが原因で会社から
罰金として給料を減額されることは,
労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に違反して無効です。
パワハラを受けたら,ボイスレコーダーなどで録音して証拠に残し,
しんどいときには,有給休暇をとって休みましょう。
新人でも6ヶ月継続勤務し,8割以上出勤すれば
10日間の有給休暇が取得できます。
1日8時間を超えて労働すると残業代を請求できるので,
自分の労働時間を記録しましょう。
サービス残業は労働基準法37条違反なので,
自分の残業代がきちんと支払われているかチェックしましょう。
働き過ぎると,人は精神を害するか,
過労死するので,しっかり休みましょう。
会社から,辞めてほしいと退職勧奨をされても,
労働者には退職勧奨に応じる義務がないので,
辞めたくないのであれば,きっぱりと断るようにしましょう。
受講していた大学生は,ほとんどアルバイトをしていたので,
残業代の話しなどには真剣に耳を傾けてくれていました。
若者が就職する前に,ワークルールをしっかりと学び,
会社からの理不尽な扱いに屈することなく,
権利を主張する力を身につけてもらいたいと願っています。
本日もお読みいただきありがとうございます。