労災認定までに時間がかかるときには傷病手当金を受給する
仕事中にけがをして長期間,
会社を休まなければならなくなったとしたら,どうしましょう。
労働者としては,休んでいる期間の
治療費の負担はどうなるのだろうか,
休んでいる期間の給料はどうなるのだろうか,
と不安になりますよね。
仕事中に労働者がけがをしたときに,
労働者を守ってくれるのが労災保険制度です。
労災保険を利用すれば,けがの治療費は
労災保険から支給されますし,
会社を休んでいる期間について,
給料の8割程度の休業補償が受けられます。
さらに,労働者が仕事中に負傷して,
治療のために休んでいる期間は,会社は,
労働者を解雇することができません。
労働者は,労災保険を利用して休んでいる限り,
安心して治療に専念することができるのです。
もっとも,精神障害などの労災認定の場合,
労働基準監督署の調査に時間がかかり,
労災の給付が開始されるのに時間がかかる場合があります。
労災と認定されるまでの間,何も手当がなければ,
労働者の生活は困窮してしまいます。
そこで,労災申請して,労災と認定されるまでに
時間がかかる場合には,健康保険の傷病手当金
の支給を受けることを検討します。
傷病手当金は,仕事以外の原因で負傷して,
それによって働けなくなった場合に,休んでいた期間のうち,
賃金が支払われなかった期間について,支給されるものです。
傷病手当金の金額は,おおむね給料の3分の2相当額であり,
支給開始から最長で1年6ヶ月の期間支給されます。
傷病手当金は仕事以外の原因で負傷した場合に支給され,
労災の補償は仕事が原因で負傷した場合に支給されるので,
2つの制度は両立しません。
そのため,労災と認定されるまでの期間,
傷病手当金の支給を受けた後に,
労災認定された場合には,
既に支払われた傷病手当金を返還しなければなりません。
この場合,労災と認定されるまでに休業していた期間について,
さかのぼって労災の休業補償給付が支給されるので,
これを傷病手当金の返還に充てることができます。
したがって,労災の申請をしても,
労災と認定されるまでに時間がかかるときには,
傷病手当金を利用して生活を維持することを検討すべきです。
ただ,傷病手当金を受給する上で注意する点があります。
それは,傷病手当金を受給するためには,
傷病手当金の申請書に必ず会社の証明が
必要になるということです。
会社が申請書に証明してくれないと,
労働者は,傷病手当金を受給できないのです。
(傷病手当金の申請書についてはこちらのサイトをご参照ください)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124
労災申請の場合,会社が労災の申請書に証明をしてくれなくても,
そのことを説明して労働基準監督署に申請書を提出すれば
受け付けてくれるのですが,傷病手当金の場合,
会社の証明がないと,申請書を受け付けてくれないのです。
ここが,傷病手当金のおかしな点なので,
改善すべきと思うのですが,実務がそうなっているので,
なんとか会社に証明してもらうしかないのです。
弁護士が傷病手当金の申請書の証明を求めると,
会社が警戒して,証明をしてくれないことがあるので,
労働者が直接,証明を求めたほうが手続がスムーズにいくことがあります。
仕事以外のけがで会社を長期間休んだり,
労災の認定がされるまで時間がかかるときには,
傷病手当金を受給するようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。