医師の労働時間規制
昨日に引き続き,医師の働き方改革について記載します。
東京都内の病院で産婦人科医として働いていた
30代の男性が自殺したのは,1ヶ月170時間を超える
時間外労働が原因であるとして,
品川労働基準監督署が労災認定をしました。
電子カルテのアクセス記録によれば,
この男性医師は,月に4回程度,当直勤務をし,
自殺する1ヶ月前の時間外労働が約173時間で,
6ヶ月間ほとんど休日がない状態で働いていたようです。
精神障害の労災認定基準では,
1ヶ月以上にわたって連続勤務を行った場合,
心理的負荷は「強」となり,
1ヶ月の時間外労働が100時間以上でもあることから,
労災が認定されたのだと思われます。
医師は,高度な専門知識を求められる職業であるため,
若いころに,知識と手技を身につけるために,
長時間労働となりやすいようです。
実際,1ヶ月の時間外労働80時間が
過労死ラインとされているのですが,
過労死ラインの2倍である1ヶ月の時間外労働160時間
を超えて働いた医師の約半数以上を
20代と30代の医師が占めており,
20代と30代の医師の勤務時間が長くなっているのです。
また,長時間労働以外にも,宿直勤務の負担も,
医師の過労の原因になっていると考えられます。
夜働いて,昼間眠ると,睡眠の質が落ちてしまい,
疲労が回復しにくくなるのです。
このように,過労死ラインを超えて
働いている医師が多いことから,
医師が健康で働くための労働環境を
整備することが求められているのです。
そこで,医師の働き方に関する検討会は,
医師の残業時間の上限の設定方法について案を提示しました。
まず,1ヶ月の時間外労働が100時間未満,
複数月の時間外労働の平均が80時間未満
という残業時間の上限が提示されました。
この基準は,今回の働き方改革関連法で導入された,
罰則付きの残業時間の上限と同じになります。
次に,必要な地域医療が適切に確保されるため,及び,
医療の質を維持・向上するための診療経験が担保されるために,
一定の条件をもとに,上記の上限規制を緩和する案が提示されました。
1つは,地域医療提供体制の確保の観点から,
対象となる医療機関を特定して,経過措置としての,
上記の上限規制を緩和する水準を設定するという案です。
もう1つは,一定の期間集中的に
技能の向上のための診療を必要とする医師について,
医療機関を特定した上で,本人の申し出に基づき,
上記の上限規制を緩和する別の水準を設定するという案です。
この2つの場合には,医師に最低限必要な
睡眠時間が確保できるように,勤務と勤務の間に
一定時間の休息を設けて,連続勤務時間を制限する
勤務間インターバルが義務付けられます。
そもそもの残業時間の上限規制が
過労死ラインに設定されていることの問題点があるものの,
まずは,医師の健康を確保するための労働時間の規制が
一歩進んだことは評価すべきと考えます。
過労死や過労自殺する医師をなくし,
医師が健康に働ける労働環境を整備するためにも,
医師の労働時間の規制を着実にすすめていくべきです。
今後の医師の働き方改革の行方に注目したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。