15歳の女子生徒と恋に落ちた中学校の男性教師の末路とは・・・

昨日は,TBSのドラマ「中学聖日記」と似たような事件で,

懲戒免職処分を受けた中学校の男性教師の

裁判の続きについて書きます。

 

 

この裁判では,原告の中学校の男性教師には,

懲戒理由が認められるのですが,懲戒処分の中で

一番重たい懲戒免職処分を課してもいいのかが争点となりました。

 

 

公務員に対する懲戒処分の審査は,

民間企業の場合とやや異なる点がありますので,説明します。

 

 

民間企業の場合,労働者と会社が,双方合意の上で

労働契約を締結して,労働者は,会社に

労務を提供する代わりに賃金を支払ってもらう

という法律関係が始まります。

 

 

他方,地方公務員の場合,労働契約と異なり,

地方公共団体の任命権者から特定の職につけられる

任用という行政行為によって,法律関係が始まります。

 

 

 

 

行政行為とは,行政庁が法律に基づき,

公権力の行使として,直接・具体的に

国民の権利義務を規律する行為です。

 

 

契約は,対等な人同士が自由に決めて合意するのですが,

行政行為は,行政庁が一方的に決めたことに拘束されるというものです。

 

 

公務員の労働関係は,このような任用という行政行為

で成り立っているので,公務員の懲戒処分の審査基準も,

民間企業と比べると,やや異なっています。

 

 

公務員の懲戒処分の審査基準として,

神戸税関事件の最高裁昭和52年12月20日判決が有名です。

 

 

この最高裁判決では,公務員に対して

どのような懲戒処分を行うかは,

任命権者の裁量に委ねられていますが,

懲戒処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,

裁量権を付与した目的を逸脱した場合には,

裁量権を濫用したものとして違法になります。

 

 

ようするに,地方公共団体などに懲戒処分の

裁量が認められているけれども,

懲戒処分が重すぎたり,不当な目的で

懲戒処分をした場合には違法になるということです。

 

 

もっとも,この審査基準は抽象的ですので,

問題行為の動機,態様,結果,

故意または過失の程度,

職員の職責,

他の職員及び社会に与える影響,

過去の問題行為の有無,

日頃の勤務態度,

問題行為後の対応

などを総合考慮して,この審査基準にあてはまるかを検討します。

 

 

本件事件では,15歳の女子生徒が交際を

積極的に望んでおり,原告の男性教師は,

真剣に交際しており,自分の性的欲求を

満たすために問題行為をしたわけではないと認定されました。

 

 

 

 

また,原告の男性教師は,15歳の女子生徒を

自宅アパートに泊めるなどして,

保護者の監護権を侵害したのですが,

アパートに宿泊させた日以外は女子生徒を

遅くない時間に帰宅させていました。

 

 

原告の男性教師は,キスや抱擁以外の

性的な行為に及んでいないので,

わいせつ性は低く,

問題行為の態様が著しく悪質ではないと認定されました。

 

 

そのため,女子生徒が原告の男性教師によって

健全な育成を妨げられるような

心身の傷を負ったことにはならないと判断されました。

 

 

加えて,原告の男性教師の勤務態度が誠実であり,

問題行為が発覚後に,原告の男性教師が

保護者に誠意をもって謝罪し,

女子生徒と一切連絡をとっていないことから,

真摯に反省していると認定されました。

 

 

 

 

以上より,原告の男性教師に対する懲戒免職処分は,

社会観念上著しく妥当性を欠き,埼玉県教育委員会は,

裁量権の範囲を逸脱して,これを濫用したと判断され,

懲戒免職処分が取り消されました。

 

 

原告の男性教師が,新米教師ではなく,中間管理職であったり,

女子生徒と性行為に及んでいれば,結論は異なった可能性があります。

 

 

原告の男性教師と15歳の女子生徒の純粋な恋愛だったことから,

裁判所は,懲戒免職処分は重すぎると判断したのかもしれません。

 

 

このように,懲戒処分は,重すぎた場合に,

無効になる可能性があるので,懲戒処分を受けた労働者は,

懲戒処分が重すぎないか検討する必要があります。

 

 

ドラマ「中学聖日記」でも裁判に発展していくのでしょうか。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。