日本郵便の65歳定年訴訟
昨日は,安室奈美恵さんの40歳の引退のニュースから,
定年が65歳から70歳に延長されることについて検討しました。
本日は,昨日と同じように定年関係の労働問題について説明します。
日本郵便が,非正規雇用労働者に65歳の定年制度
をもうけていることをめぐり,65歳で雇止めされた
非正規雇用労働者らが,雇止めは無効であるとして,
雇用継続を求めた裁判で,9月18日に最高裁判決がくだされました。
郵政民営化の前の日本郵政公社時代は,
非正規雇用労働者について,定年を定めた規定はありませんでした。
郵政民営化で日本郵便株式会社が設立されたときに,
非正規雇用労働者の定年の規定が,次のように定められました。
「会社の都合による特別な場合のほかは,
満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日
が到来したときは,それ以後,雇用契約を更新しない。」
原告の非正規雇用労働者らは,この65歳定年制により,
満65歳のときに,労働契約を更新してもらえず,
雇い止めされてしまったのです。
そこで,原告の非正規雇用労働者らは,
定年制が必要なことに正当性がないこと,
非正規雇用労働者の不利益が大きいことを理由に,
65歳以上であっても,働き続けられることを主張して,
裁判を起こしました。
最高裁は,65歳定年制が合理的な労働条件か否かを検討しました。
労働契約法7条によれば,合理的な労働条件が定められた
就業規則が労働者に周知されていれば,
就業規則で定められた労働条件が労働契約の内容になります。
65歳定年制は,高齢の労働者が屋外の仕事をする場合,
事故が懸念される一方,加齢による労働力の低下を
個別の労働者ごとに検討することは困難であることから,
一定の年齢に達したときには労働契約を更新しない
とすることには合理性があると判断されました。
さらに,昨日解説したように,65歳までの雇用確保を
義務付けている高年法にも違反しません。
正社員は,60歳で定年となり,
65歳までは再雇用が認められますが,
65歳以上の再雇用は認められていませんので,
正社員との均衡もとられていました。
そのため,65歳定年制は,合理的な労働条件であり,
労働契約の内容になっているので,
65歳で雇止めしても問題がないと判断されたのです。
現時点では,65歳定年制が一般的ですので,
会社が拒否しているのにもかかわらず,
65歳を超えて働き続けるのは困難なことが多いです。
もっとも,昨日説明したように,高年法が改正されて,
定年が70歳に延長されれば,
65歳を超えても問題なく働き続けることができます。
人手不足が深刻な問題となっているので,会社は,
やる気があって働く能力がある高齢の労働者を
積極的に活用すべきだと思います。
本日もお読みいただき,ありがとうございます。