外回りの営業マンの残業代請求

外回りの営業マンの場合,会社の外で仕事をしているので,

会社は,営業マンが外回りをしているときの

労働時間を算定することが難しいときがあります。

 

 

そのような場合,会社が,事業場外労働のみなし時間制という制度

を利用して,会社の外で行った仕事について,

一定の労働時間仕事したものとみなして,

残業代を支払わないようにしていることがあります。

 

 

例えば,営業マンが会社の外で9時間働いたとします。

 

 

 

 

通常であれば,この営業マンは,1日8時間を超えた

1時間分の残業代を会社に対して請求できます。

 

 

ところが,事業場外労働のみなし時間制が適用されれば,

営業マンが会社の外で働いた時間が9時間であっても,

所定労働時間(労働契約で定められている勤務時間)である

7時間45分働いたとみなされてしまい,

1日8時間以内の労働となり,

残業代を請求することができなくなります。

 

 

会社から,事業場外労働のみなし時間制だから,

残業代は一切支払う必要がないと言われた場合,

労働者は,残業代請求をあきらめなければならないのでしょうか。

 

 

結論をいうと,事業場外労働のみなし時間制が有効に適用される

ことは少なく,労働者は,残業代請求をあきらめなくてもよいのです。

 

 

事業場外労働のみなし時間制を適用するための要件の一つに,

労働時間を算定し難いとき

というものがあります(労働基準法38条の2第1項)。

 

 

会社の外で働いている労働者の労働時間を会社が把握・算定できる

のであれば,事業場外労働のみなし時間制は適用されないのです。

 

 

そして,「労働時間を算定し難いとき」とは,

「就労実態等の具体的事情をふまえ,社会通念に従い,

客観的にみて労働時間を把握することが困難であり,

使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合

とされています(東京高裁平成23年9月14日判決・

阪急トラベルサポート事件・労働判例1036号14頁)。

 

 

もうすこし具体的に検討すると,

会社の事前の具体的指示があったり,

労働者が日報を提出して,

事前または事後に業務予定の報告を会社にしていたり,

携帯電話や電子メールを利用して業務指示や

業務報告が行われていたならば,

労働時間を把握することが可能であり,

会社の具体的な指揮監督が及んでいるといえます。

 

 

このように,会社から,事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

これらの事情があれば,事業場外労働のみなし制は適用されなくなり,

実際に働いた時間で残業代を計算して

会社に請求すれば,認められることになります。

 

 

また,仮に,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

外回りの営業マンが仕事をするために必要とされる時間が

平均的に7時間45分ではなく,9時間であれば,

みなし労働時間は7時間45分ではなく9時間となり,

1日8時間を超える1時間分の残業代を請求できます。

 

 

さらに,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

休日労働と深夜労働については,通常どおり残業代を請求できます

 

 

現在では,通信技術が発達しており,会社は,

労働者が今どこにいるのかをリアルタイムに把握することができ,

思い立ったときに,指示を与え,報告を求めることができますので,

「労働時間を算定し難いとき」は少なくなっています。

 

 

 

そのため,会社から事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

認められることはあまりないと考えられますので,

労働者,あきらめずに残業代請求を検討してみてください。