過酷な労働で健康を害する労働者が減らない日本社会

厚生労働省が平成29年度の過労死等

の労災補償状況を公表しました。

 

 

厚生労働省では,過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や,

仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害

の状況について,毎年公表をしています。

 

 

まず,脳・心臓疾患については,

労災請求件数が840に対して,

支給決定件数が253であり,

認定率は38%です。

 

 

このうち,脳・心臓疾患を発症して死亡した,

いわゆる過労死の労災請求件数が241に対して,

支給決定件数が92であり,

認定率は39%です。

 

 

脳・心臓疾患の労災請求件数は,

平成26年度以降増加していますが,

支給決定件数は,その年で増えたり減ったりしています。

 

 

発症前1ヶ月間におおむね100時間または

発症前2ヶ月間から6ヶ月間にわたって,

1ヶ月当たりおおむね80時間を超える

時間外労働が認められると,長時間労働が原因で

脳・心臓疾患を発症したと認定されやすいです。

 

 

 

 

そのため,脳・心臓疾患の労災請求件数が増えている

ということは,長時間労働が原因で,

脳や心臓を悪くした労働者が増加しているといえ,

長時間労働による労働者の健康悪化の状況が

改善されていないと考えられます。

 

 

もっとも,過労死は,平成27年度から減少傾向にあります。

 

 

業種別でみると,脳・心臓疾患の労災請求件数も支給決定件数も

一番多いのは,運輸業,郵便業のうち道路貨物運送業です。

 

 

他の業種に比べてダントツで多いです。

 

 

長距離トラック運転手は,深夜に長時間運転しますし,

トラックの中で休憩しているので,十分な休息ができておらず,

睡眠の質が悪く,疲労を回復することができずに,

疲労が蓄積して,脳・心臓疾患を発症するのだと考えられます。

 

 

次に,精神障害の労災補償状況ですが,

平成29年度の労災請求件数が1732に対して,

支給決定件数が506で,

認定率は32.8%です。

 

 

労災請求件数は,前年度と比較して146件も多く,

精神障害の労災請求は毎年右肩上がりに増加しています。

 

 

転勤やクレーム処理をしたという出来事の前後に,

1ヶ月100時間程度の時間外労働が認められたり,

発病直前の連続した3ヶ月間に1ヶ月当たり

おおむね100時間以上の時間外労働が認められる場合

長時間労働が原因で精神疾患を発症したと認定されやすいです。

 

 

 

 

労災認定された506人のうち,

最も多かった原因の出来事は

嫌がらせ,いじめ,または暴行を受けた」の88人でした。

 

 

パワハラや長時間労働が原因で精神を

病んでしまう労働者が増加していることが分かります。

 

 

精神疾患では,労災請求件数が多い業種は,医療・福祉の分野です。

 

 

医療や福祉の職場では,夜勤や交替勤務,

組織における人間関係,患者とのトラブルなどが原因で,

疲労とストレスが蓄積して,

精神疾患を発症する労働者が多いのかもしれません。

 

 

平成29年度の過労死等の労災補償状況をみると,

日本の労働者は,過酷な労働をして健康を

害してしまうことがよく分かります。

 

 

過酷な労働で健康を害する労働者を少しでも減らすように,

長時間労働を削減したり,パワハラを防止する施策が求められます。

 

 

また,労災の認定率が30%台で,

労災はやや狭き門となっているので,

労災の認定率が多くなり,一人でも多くの

労働者が労災で救済されることを願っています。