慰謝料570万円が認められたパワハラ事件

 コンビニ従業員に対するパワハラの損害賠償請求事件である東京地裁平成28年12月20日判決・コンビニエース事件(労働判例1156号28頁)を紹介します。

 

 原告は,コンビニの従業員,被告は,フランチャイジーとしてコンビニ3店舗を経営する会社,代表取締役,コンビニの店長です。原告は,代表取締役と店長から,①火のついたタバコを鼻に押し付けられる,②カラオケマイク,灰皿,角棒,六角棒,金属製スプーンで殴打される,③エアガンで撃たれる,④店舗の金銭がなくなったなどと述べて,その穴埋めを強要される,④原告に会社の飲み会の支払を強要される,⑤売残り品の買取を強要される,⑥原告がミスした場合に借用書を書かせて,金銭を支払わされる等のいじめやパワハラのを受けました。

 

 上司の部下に対する言動がパワハラか,それとも適法な注意や指導かは,事案に応じてケースバイケースで判断していくことになるのですが,本件事件は,暴力や精神的虐待に該当し,あきらかに違法なパワハラ・いじめに該当します。

 

 本件事件で特筆すべき点は,パワハラ事件において高額な慰謝料570万円(認容された総損害額は930万4211円)を認容したことにあります。被告の行為の悪質性や執拗性,原告が受けた精神的苦痛等様々な要素を総合考慮して,高額な慰謝料が認められました。

 

 パワハラ事件は,立証が難しく,立証ができたとしても,慰謝料額が低い等,労働者の救済に難点があることが多いのですが,本件事件は,これほど悪質なパワハラ・いじめの場合には相当高額な慰謝料が認められる場合があることを示した点に意義があると思います。

 

 ところで,判例を読んでいて,こんなに酷い会社が今でもあることを知り,大変驚きました。