電通の36協定問題

 朝日新聞の報道によれば,7月7日,東京地検は,電通の違法残業事件において,36協定が労働基準法の要件を満たしておらず,無効であったようです。

 

 http://www.asahi.com/articles/ASK77659RK77ULFA02L.html

 

 労働基準法には,32条において,休憩時間を除いて1日8時間以上,1週間に40時間を超えて働かせてはならない,という労働時間の原則が規定されています。

 

 しかし,時間外・休日労働について,当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合,そのような組合がない場合には当該事業場の労働者の過半数を代表する者と使用者との間で,書面による労使協定を締結し,労働基準監督署へ届出がされた場合,例外的に時間外・休日労働が可能となります(労働基準法36条)。この労使協定が36協定です。

 

 朝日新聞の報道によると,2015年10~12月の期間,電通の東京本社の労働組合の加入者数が労働者の半数を超えていなかったようです。労働基準法36条の過半数の労働者とは,正社員,契約社員,パートを含む全ての労働者であるところ,電通の非正規社員が増加したことによって,電通の全従業員のうち,労働組合に加入していた労働者が半数を切ってしまっていたようです。

 

 中小企業であれば,労使協定の有効期限が経過しているのに放置されたままであったり,労働者の過半数代表者を選出する手続きにミスがあったりすることはよくあるのですが,電通ほどの大企業において,36協定の要件が満たされておらず,無効であった期間があるのは異例です。

 

 労働者は,自身の会社の労使協定を入念にチェックする必要があります。