契約社員と正社員の労働条件の相違についての判例紹介

契約社員と正社員の労働条件の相違が労働契約法20条に違反するかが争われた東京地裁平生29年3月23日判決・メトロコマース事件(労働判例1154号5頁)を紹介します。

 

東京メトロの売店で販売業に従事している契約社員らが、被告会社の正社員のうち売店での販売業務に従事する者と業務の内容、責任、店舗間異動や他部署への異動の範囲が同一であるにもかかわらず、契約社員と正社員との労働条件に差異があると主張して、本給・賞与、各種手当、退職金、褒賞の各差額を請求した事案です。

 

本判決は、原告ら契約社員と正社員との間の職務の内容等の相違について、被告会社の大半の正社員は被告会社の各部署において売店業務以外の多様な業務に従事し、配置転換や出向に応じることも予定されていることから、原告ら契約社員と正社員との間の業務内容及びその業務に伴う責任の程度、職務内容及び配置の変更の範囲には明らかな範囲があるとしました。

 

被告会社のどういった正社員と契約社員を比較するかについて、原告らは、専ら売店業務に従事する正社員と契約社員との労働条件の相違を検討すべきと主張しましたが、本判決は、売店業務に従事する正社員のみならず、広く被告会社の正社員一般の労働条件の相違を比較すべきとしました。

 

その上で、賃金制度、資格手当加算、昇給・昇格、住宅手当、賞与、退職金、褒賞といった労働条件の相違については、長期雇用を前提とした正社員に手厚くし、有為な人材の確保・定着を図る等の目的から、人事制作上一定の合理性を有するとして、不合理とは認められませんでした。

 

一方、正社員には、所定労働時間を超える勤務について、はじめの2時間までは1時間につき2割7分増、2時間を超える時間については3割5分増の早出残業手当が支給されているのですが、契約社員には2割5分増の早出残業手当が支給されていました。この早出残業手当の相違については、労働契約法20条に違反する不合理な労働条件にあたるとしました。

 

早出残業手当の労働条件は無効となり、早出残業手当の差額部分について不法行為の損害賠償請求が認められました。

 

労働契約法20条の趣旨や解釈、どのような正社員の労働条件の相違と比較するか等について判断した点が参考になります。今後、同一価値労働同一賃金が議論され、正社員と非正規社員との労働条件の相違が問題になることが増えることが予想されますので、紹介します。