専門業務型裁量労働制についての判例紹介
京都の弁護士塩見卓也先生が勝ち取った専門業務型裁量労働制についての判例を紹介します。京都地裁平生29年月27日判決でK工房事件です。労働法律旬報1889号に掲載されている判例です。
神社仏閣の壁画、天井画、襖絵などの修復、制作などを業としている個人事業主のもとで勤務していた原告らが、未払残業代を請求した事件です。被告は、「デザイン業」の裁量労働制を根拠に残業代の支払いを拒みました。
専門業務型裁量労働制とは、労働時間の算定にあたって,裁量性の高い労働に従事している者については,実労働時間ではなく予め定められた一定時間(みなし時間)働いたものとみなす制度です。専門業務型裁量労働制が適用された場合,みなし時間が8時間の場合,実際には10時間働いたとしても,8時間だけ働いたものとみなされ,残業代支払の対象となりません。
判決は、労使協定に著名している労働者代表が選挙で選ばれていないとの陳述書が提出され、専門業務型裁量労働制導入の労使協定締結のための労働者代表が適正に選任されておらず、また、就業規則が労働者に周知されていないとして、「原告らが行っていた業務が専門業務型裁量労働制の対象業務に該当するか否かを判断するまでもなく、専門業務型裁量労働制を採用したことにより勤務時間の定めが原告らに適用されないとの被告の主張は認めることができない。」と判示し、残業代・付加金等で合計2610万円と高額の支払いを命じました。
専門業務型裁量労働制の適用要件は厳格であり、労使協定締結の手続きが杜撰なこともあり、専門業務型裁量労働制の適用が否定されることがあります。会社から専門業務型裁量労働制だから残業代を支払わないと主張された際、労使協定締結の手続きに問題がないかチェックする必要があります。