過労死防止大綱の改訂
7月24日に,厚生労働省が過労死防止大綱を3年ぶりに改訂しました。
過労死防止大綱を読むと,現代社会の労働の現状と課題,
過労死を防止するには,どのような対策を行えばいいのかが
分かりますので,本日は,労働者の方々に
知っておいていただきたい点をアウトプットします。
まず,現状と課題ですが,月末1週間の労働時間が
60時間以上の労働者の割合は,平成26年から平成29年の間
に0.8ポイント(32万人)減少し,平成29年は
7.7%(432万人)となっており,
長時間労働している労働者がなかなか減少していない現状があります。
1つの勤務と1つの勤務の間に連続した休息時間をもうける
勤務間インターバルの導入状況は,「導入している」企業が1.4%,
「導入を予定又は検討している」企業が5.1%,
「導入の予定はなく,検討もしていない」企業が92.9%であり,
まだまだ勤務間インターバルについての理解が広がっていません。
年休の取得日数は横ばいで推移しており,
取得率は直近2年間で微増しているものの,
平成28年で49.4%と近年5割を下回る水準で推移しています。
過労死を発生させる一つの原因は長時間労働ですので,
長時間労働する労働者に着目して,労働時間の短縮,
年休の取得の促進,労働時間の把握を客観的に行う
ことが課題となっています。
この現状と課題を踏まえて,過労死防止大綱では,
数値目標が設定されています。
労働時間については,2020年までに
週労働時間60時間以上の労働者の割合を5%以下とする。
勤務間インターバルについて,2020年までに
勤務間インターバルを知らなかった企業の割合を20%未満とし,
勤務間インターバルを導入している企業の割合を10%以上とする。
年休について,2020年までに年休の取得率を70%以上とし,
年休の取得日数が0の労働者を解消する。
現状の労働実態からすると野心的な目標ですが,
過労死防止大綱ができてからも,過労死や過労自殺がなくならず,
事件も大きく報道されていることから,
過労死や過労自殺をなくすために,
国民が一丸となって達成すべき目標なのです。
また,働きすぎが多いとして特別に調査する対象業種として,
自動車運転者,教職員,IT産業,外食産業,医療,建設業,メディア
の7業種が選ばれました。
最近,過労死や過労自殺がマスコミで大きく報道されたり,
労働判例の過労死や過労自殺で紹介されている
業種と一致しているので,まずはこれらの業種の
長時間労働対策をいかにしていくのかが重要になります。
今後,国は,過重労働の疑いのある会社への監督指導の徹底,
過労死を発生させた会社に対する原因究明と再発防止の指導,
違法な長時間労働が認められた企業の公表,
36協定を締結していない会社に対する監督指導など,
長時間労働を削減する取り組みを実施していきます。
過労死をなくしていくためには,
労働者が自分の労働時間や健康状態を把握し,
周囲の人も働き過ぎを警戒するなど,
国民一人ひとりの小さな実践が不可欠だと考えます。
過労死防止大綱が,少しでも多くの国民に,
過労死の実態を知ってもらい,過労死をなくすために
どうすればいいのかを真剣に考えるきっかけになることを願います。