その定額手当の支払いは適法な残業代の支払いといえるのか

会社から毎月,営業手当,役職手当,技術手当などの

定額手当が支給されていますが,残業代は支払われていません。

 

 

会社に聞くと,それらの定額手当が

残業代の代わりであるという説明を受けました。

 

 

定額手当の金額が低いのに,毎日長時間残業をしていた場合,

労働者は,本当に定額手当の金額は,

自分の残業時間から正確に計算されたものなのか疑問に思い,

残業代が少なくて損をしている気になります。

 

 

 

 

このように,一定金額の定額手当を

残業代の代わりとする制度を固定残業代といいます。

 

 

この固定残業代が適法な残業代の支払いといえるかが,

未払残業代請求の事件ではよく問題になります。

 

 

固定残業代が適法な残業代の支払いとは認めれなかった場合,

会社は,残業代を1時間も支払っていなかったことになり,

固定残業代部分が残業代の計算基礎となる

賃金に組み込まれることになり,1時間当たりの

残業代の単価が跳ね上がることになるので,

会社は,必死に抵抗してくることが多いです。

 

 

固定残業代について,最高裁は平成30年7月19日

に判決を出して,固定残業代が適法な残業代の支払いといえるかを

判断するために,以下の基準を示しました。

 

 

「雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,

使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,

労働者の実際の労働時間等の勤務状況

などの事情を考慮して判断すべきである。」

 

 

①契約書,就業規則,賃金規定などの記載内容,

②会社の固定残業代についての説明,

③実際の労働時間

が判断の基準として考慮されるのです。

 

 

 

 

この最高裁判決の事件では,

薬剤師の毎月の業務手当10万1000円

が適法な残業代の支払いといえるのかが争われました。

 

 

この事件では,賃金規定には,

「業務手当は,一賃金支払期において時間外労働があったものとみなして,

時間手当の代わりとして支給する。」と記載されていました。

 

 

また,会社と労働者との間で作成された確認書には,

「業務手当は,固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)

として毎月支給します。一賃金計算期間における時間外労働が

その時間に満たない場合であっても全額支給します。」

と記載されていました。

 

 

そのため,「会社の賃金体系においては,

業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるもの

と位置づけられていた」と判断されて,

①と②の要件を満たすとされました。

 

 

そして,計算上,業務手当は,

約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当し,

薬剤師の実際の時間外労働の状況と大きくかいりしていない

と判断されて,③の要件を満たすとされました。

 

 

その結果,業務手当は,適法な残業代の支払いと認められました。

 

 

さて,この最高裁判決からいえることは,

給料明細で,単に「時間外労働手当」等と

記載されているだけでは不十分であり,

①労働契約書,就業規則,賃金規定に

「時間外労働手当」の記載がなかったり,

②会社が労働者に対して,「時間外労働手当」

の説明を何もしていなかったり,

③実際の残業時間と「時間外労働手当」の金額が不均衡だった場合,

適法な残業代の支払いとは認められません。

 

 

ブラック企業は,低い定額手当が残業代の代わりだと言い張り,

追加で残業代を支払うことなく長時間労働をさせることがありますが,

上記の①~③の要件を検討すると,

定額手当が適法な残業代の支払いと認められない可能性があります。

 

 

定額手当が残業代の代わりに支給されている労働者は,

一度,ご自身の定額手当が適法な残業代の支払いなのかを,

上記①~③の基準をもとに検討してみることをおすすめします。