ライドシェアの運転手は労働者か
昨日に引き続き,ライドシェアの労働法
の問題点について記載します。
ライドシェアの世界最大手のウーバーは,
あくまで,運転手と利用者のマッチングを
仲介しているだけなので,ウーバーに登録している運転手は,
労働者ではないという見解を示しているようです。
日本において,ライドシェアの運転手が,
労働者ではないことになれば,最低賃金法が適用されないので,
報酬が際限なく低くなり,どれだけ働いても
生活できなくなる危険があります。
また,ライドシェアの運転手が,
労働者ではないことになれば,ウーバーが突然,
運賃から取得する手数料を勝手に増額して,
運転手が取得する利益が勝手に減らされても,
運転手は何も文句をいえない可能性があります。
仮に,ライドシェアの運転手が労働者であれば,
会社が労働条件を一方的に不利益に変更することはできないので,
勝手に手数料を増額されることはなくなり,
運転手が取得する利益を一定水準に確保することができます。
このように,ライドシェアの運転手が
労働者であるか否かによって,
運転手の待遇や権利が全然違ってくるのです。
ウーバーは,自社の利益を大きくするために,
運転手は労働者ではないとして,
雇用責任が生じないようにしているのだと思います。
それでは,労働者といえるためには,
どのような判断基準を満たせばいいのでしょうか。
以前ブログで記載しましたが,
労働基準法の「労働者」について,
昭和60年に労働基準法研究会報告
「労働基準法の『労働者』の判断基準について」
という文書に判断基準が記載されています。
大まかに言えば,
①指揮監督下の労働といえるか,
②報酬が労務対償性を有するか,
③補強要素を総合考慮します。
ただ,この判断基準が抽象的なこともあり,
裁判の実務では,個々の事案ごとに,
具体的な事実をあてはめて結論を出しますので,結論がわかれます。
そのため,労働者といえるか判断に迷うこともあります。
さて,ウーバーの場合,運転手は,
顧客の評価が低かったり,
配車依頼に応じなかった場合,
ウーバーのアルゴリズムに低い評価をつけられて,
配車依頼がこなくなります。
配車依頼がこなくなれば,
ライドシェアを本業にしている運転手は,
仕事がなくなり,事実上解雇されるのと同じになるので,
顧客の評価をあげるような努力をしたり,
配車依頼に極力応じるようになりますので,
ウーバーからの依頼を断る自由が事実上ないことになります。
また,配車依頼のあった顧客のもとへ迎えに行く際に,
GPSによって経路が指示されますので,
ウーバーから業務遂行の指示があるといえます。
そうであれば,ライドシェアの運転手は,
ウーバーの指揮監督下で労働しているといえるので,
労働基準法の労働者にあたる可能性があります。
今後,雇用によらない働き方が増えていきますが,
労働法によって保護されない人が増えて,
低賃金で長時間働かせられて健康を害する人
が増えるリスクがあります。
そうならないために,雇用によらない働き方が増えたとしても,
労働者として適切な保護を及ぼす必要があります。
そのためにも,今の労働者の判断基準は
不明確な点がありますので,労働者の概念を拡張して,
労働者として守られる人を拡大していくべきだと考えます。
なお,今年の夏から,ウーバーは,
淡路島において,タクシー事業者と連携して,
配車事業の実証実験を始めるようですので,
日本におけるライドシェアの行末について注目していきます。