医師の働き方改革
報道によると,北里大学病院において,医師に就業規則を適用させずに,医師を始業・終業の時刻や所定労働時間,休日についてのルールがない状態で働かせていたようです。また,36協定を締結する際に,労働者の過半数代表者を選出するのですが,その選出に,人事担当の病院の副院長が関与しており,選出の手続が適法ではなかったようです。その結果,北里大学病院は,労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告や改善指導を受けたようです。
https://www.asahi.com/articles/ASL1J73VML1JULFA02J.html
職場の基本的なルールや労働条件を定めた就業規則を特定の職種にだけ適用しないことになれば,その特定の職種の労働者は,何時から何時まで働けばいいのかが不明確になり,労働時間を把握する必要がなくなり,違法な残業が横行することになります。通常,就業規則は,職場の全労働者に適用されます。
また,36協定を締結しなければ,会社は,労働者に対して,残業をさせることはできません(労働基準法36条)。その36協定を締結する際に,労働者の過半数代表者を選出する必要があります。労働者の代表者を選出するのですから,選出の過程に経営者が関与すると,選出の手続に労働基準法違反があり,そのような手続で選出された労働者の代表者と締結した36協定は無効となります。
最近,医療機関における医師に対する杜撰な労務管理が問題となっています。そこで,医師の働き方改革に関する検討会が,中間的な論点整理と医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組をまとめました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000191032.html
医師は,昼夜問わず,患者の対応が求められる仕事であり,他の職種と比較して抜きん出た長時間労働の実態があります。医師の長時間労働を放置すると,医師の健康が害されて,医療の質や安全が低下するおそれがあることから,医師が疲弊せずに働き続けることが重要になります。
そこで,医療機関に求める緊急的な取組として,①タイムカード等によって在院時間を把握するという医師の労働時間管理の適正化,②36協定が締結されているか,36協定に定める時間を超えて時間外労働をさせていないかの自己点検,③医師の業務を医師以外の職種へ業務を移管すること等が挙げられています。
病院に勤務する医師は労働基準法で保護される労働者ですので,医師の働き過ぎを防止して,健康に働ける環境を整備していく必要があります。医師の働き方改革には,医療を利用する国民の理解が欠かせないので,医師の働き方の問題について,多くの国民が関心をもってほしいと思います。