石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
入社3日目で解雇されたクライアントの労働審判事件
1 事件の概要
今回は、私が担当した解雇事件の解決事例を紹介させていただきます。
40代男性のクライアントは、ハローワークの求人票を見て、
電子部品や電子機材の製造をしている会社に応募し、採用されました。
しかし、クライアントは、入社して3日目に、会社を解雇されました。
クライアントと会社の労働契約には、試用期間が設定されていましたので、
試用期間中に解雇されました。
解雇の理由としては、
①上司の指導に対して返事をしない、
②上司の指示に反発して従わない、
③無断でロッカーを使用した、
④会社のルールに従わずに勝手に行動をしている、
といったことがあげられていました。
クライアントとしては、会社が主張している解雇理由について、身に覚えがなく、
入社3日目で解雇されることに納得できず、私のもとへご相談にこられました。
2 弁護活動
まず、大前提として、解雇は、よほどのことがない限り、できません。
なぜならば、解雇されると、労働者は、
生活の糧である給料を失うことになり、
その労働者の給料で生活をしている家族を含めて、
生活が困窮することになるので、日本では、
解雇に対して、厳しい規制をかけています。
また、働くことは、人間にとって、自己実現の場でもあり、
解雇によって、自己実現の場を奪うことは、
抑制的であるべきということからも、
解雇に対しては、厳しい規制がかせられているのです。
そのため、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合には、無効になります。
ここで、客観的に合理的な理由については、
①解雇の理由があるのか、
②解雇の理由が将来も存続すると予測できるか、
③解雇回避措置を尽くしたといえるのか、
の3つを検討します。
社会通念上の相当性については、労働者にとって有利な、
あらゆる事情(労働者の情状、他の労働者の処分との均衡、会社側の落ち度など)
を考慮して、解雇が労働者にとって過酷ではないかを検討します。
裁判実務では、この客観的合理的な理由と、
社会通念上の相当性の要件を満たすのは、
ハードルが高く、解雇が無効になることはよくあります。
法律相談で、クライアントの話しを聞いていますと、
会社が主張している解雇理由の①については、
クライアントは、上司から指導を受けた時には、
メモをとりながら、返事をして聞いていました。
会社が主張している解雇理由②については、
クライアントは、上司の指示に反発しておらず、疑問点を尋ねただけでした。
会社が主張している解雇理由③については、クライアントは、
会社から指定されていたロッカーとは別のロッカーを使用したものの、
会社から指導を受けて、それ以降は、
別のロッカーを使っておらず、改善していました。
会社が主張している解雇理由④については、
クライアントは、会社のルールにきちんと従っていました。
このように、クライアントの話しによりますと、
会社の主張している解雇理由は存在しないことになります。
そして、クライアントは、入社して3日で解雇されたのですが、
仮に、会社の主張している解雇理由があったとしても、
その後の会社の指導によって、
クライアントの問題点が改善される可能性が十分にあるにもかかわらず、
いきなり解雇しているので、会社は、解雇回避措置を尽くしていません。
そのため、会社は、客観的合理的な理由がないにもかかわらず、
クライアントを解雇しているので、この解雇は、
無効になる可能性が高いと考えました。
そこで、3日で解雇されたクライアントの無念な思いに応え、
解雇事件の依頼を受けて、会社に対して、解雇が無効であり、
クライアントには、働く意思があることを通知しました。
解雇が無効になれば、労働者としての地位が復活し、
解雇期間中の未払賃金を、会社に対して、請求できるのですが、
未払賃金を請求するためには、
会社で働く意思があることを表明する必要があるのです。
もっとも、会社からは、誠意ある回答がなかったことから、
労働審判を申し立てました。
3 結果
労働審判とは、3回の期日で終結する、迅速な裁判手続です。
普通の裁判ですと、1年くらい時間がかかるのですが、
労働審判ですと、申立をしてから3ヶ月以内で終結することが多く、
早く事件を解決できるのが魅力です。
特に解雇事件では、前の会社とのトラブルを早く解決して、
すっきりしてから、次の職場で働きたいと考える労働者が多いことから、
私は、労働審判を活用することが多いです。
今回の労働審判では、裁判所も、入社して3日で解雇したのでは、
全く解雇の要件を満たしていないと考えてくれ、会社を強く説得してくれました。
もっとも、労働審判では、迅速に解決するために、
労働者に有利な事案でも、金銭的な解決における金額を決定する際に、
譲歩を求められます。
最終的には、クライアントの給料の6ヶ月分の108万円を、
会社に支払ってもらうことで調停が成立しました。
入社して3日で解雇され、やるせない思いを抱いていたクライアントでしたが、
労働審判をして、会社から、解決金が支払われることで、
傷ついた尊厳を回復することができて、この解決に満足されました。
解雇は、よほどの理由がない限りできませんので、
解雇が無効になることはありえます。
解雇されて、納得がいかないときには、弁護士にご相談ください。
弁護士は、解雇について、適切なアドバイスをしてくれます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。