石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
テレワークの場合は給料を減額すると言われたときの対処法
1 新型コロナウイルス関連の労働相談が増えています
4月6日に石川県で実施した日本労働弁護団主催の
新型コロナウイルス労働問題ホットラインの後も,
私のもとには断続的に電話での相談があります。
緊急事態宣言がだされ,新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない今,
多くの労働者が困っていることがわかります。
やはり,賃金に関する相談が多いです。
2 テレワークの場合に会社は給料を減額できるのか
その中で,会社からテレワークを命令されて,
給料を減額すると言われたという相談がありました。
この会社の給料減額は違法と考えられます。
まず,テレワークは,就業場所を会社ではなく,
自宅とするものであり,労働者は,休んでいるのではなく,
自宅で働いているので,会社は,テレワークをした労働者に対して,
今までどおりの給料を支払わなければなりません。
テレワークに関して,会社が給料を減額できるのは,
次の2点が考えられます。
①労働者との合意に基づく給料減額
②就業規則の変更による給料減額
3 合意による不利益変更
①について,会社が労働者に対して,テレワークの場合には,
給料を減額することを提案し,労働者がこれを了承すれば,
給料減額について,労使の合意があったとして,
給料減額は有効になる可能性があります。
もっとも,給料減額のように労働者の労働条件を不利益に変更する場合,
労働者の同意については,「労働者の自由な意思に基づいてされたもの
と認めるに足る合理的な理由が客観的に存在する」ことが必要なので,
そう簡単には同意は認められません。
労働者としては,給料減額に応じたくないなら,
同意をしなければいいのです。
断固として拒否してください。
4 就業規則の不利益変更
②について,おそらく,多くの会社では,
テレワークの場合には給料を減額するという
就業規則の条項を設けているところはないと思いますので,
今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,
就業規則の内容を変更することが考えられます。
しかし,就業規則を労働者に不利益に変更するためには,
①労働者の受ける不利益の程度,
②労働条件の変更の必要性,
③変更後の就業規則の内容の相当性,
④労働組合などとの交渉の状況,
⑤その他の就業規則の変更に係る事情,
を総合考慮して,合理的といえなければなりません。
テレワークの給料減額にあてはめますと,
①自宅でも会社と同じように働いているのに給料が減額されるのでは,
労働者の被る不利益は大きいです。
特に,10%を上回るような賃金減額は,
相当に大きな不利益と考えられます。
そのため,新型コロナウイルスの感染拡大で
会社の経営状況が危機的となっていないのであれば,
②労働条件の変更の必要性があるとはいえず,
テレワークによる給料減額を内容とする就業規則の変更は無効になります。
就業規則を不利益に変更されたかについては,
会社は変更した就業規則を労働者に周知しなければならないので,
労働者は,周知された就業規則をよく確認してください。
まとめますと,会社からテレワークを命令されて,
給料を減額すると言われても,応じる必要はなく,
給料の満額を請求してください。
もし,テレワークをして給料の満額を会社が支払わない場合,
弁護士や労働基準監督署に相談して,アドバイスを求めてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。