石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
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有期労働契約に不更新条項や更新上限条項がある場合には更新されないのか
1 有期労働契約における不更新条項や更新上限条項
先日、非正規雇用労働者の方から、次のような労働相談を受けました。
契約期間を3年間とする、有期労働契約を締結したのですが、
3年を過ぎても、会社で働き続けることは可能でしょうか。
その方は、会社から、3年間で有期労働契約が終了するとの説明を受けており、
労働契約書にも、3年を超えての更新はしないことが明記されていました。
このように有期労働契約を更新しないとする不更新条項や、
有期労働契約の契約期間の上限が定められている更新上限条項がある場合、
契約期間を超えて、有期労働契約が継続されることがあるのでしょうか。
結論としては、契約期間を超えて、有期労働契約が継続されることはなく、
雇止めが有効になることがほとんどです。
2 雇止めの法律関係
まず、有期労働契約は、契約期間の満了で終了するのが原則です。
他方、有期労働契約であっても、契約期間が満了しても、
会社が有期労働契約を更新してくれれば、
非正規雇用労働者の雇用は継続します。
有期労働契約の契約期間の満了で、
更新を拒絶することを雇止めといいます。
次に、有期労働契約が長期間にわたって、
反復継続して更新されてきた場合には、例外的に、
有期労働契約が継続されることがあります。
すなわち、非正規雇用労働者において、
有期労働契約が更新されるものと期待することについて、
合理的な理由がある場合には、雇止めが無効となって、
有期労働契約が更新される余地があるのです(労働契約法19条)。
この有期労働契約が更新されるものと期待することについての
合理的な理由があるかを検討する際に、
不更新条項や更新上限条項がマイナスにはたらくのです。
有期労働契約を更新しないことが労働契約書に明記されていれば、
有期労働契約が更新されると期待できないわけです。
このことは、最初に有期労働契約を締結する際に、
不更新条項や更新上限条項が定められている場合に、
よくあてはまります。
3 有期労働契約の更新の途中で不更新条項や更新上限条項がいれられた場合
もっとも、有期労働契約を何回か更新していた途中で、
不更新条項や更新上限条項がいれられた場合には、事情が少し変わります。
すでに何回か有期労働契約を更新していく過程で、非正規雇用労働者に、
一定程度の契約更新への期待が存在していた場合であれば、
途中で、不更新条項や更新上限条項を定めたことに、
非正規雇用労働者が、自由な意思に基づいて合意していなかったなら、
不更新条項や更新上限条項を理由とする雇止めが無効になる可能性があります。
非正規雇用労働者が、自由な意思に基づいて、
不更新条項や更新上限条項に同意したかを検討するにあたっては、
次の事情が考慮されます。
・説明会などで雇止めの経緯や理由などについて十分な説明があったか。
・非正規雇用労働者の意思表示が明確であったか
(異議を示したか、署名押印をしたのか)。
・退職届を提出したか。
会社が、非正規雇用労働者に対して、
十分な説明をするなどの手続きをふまずに、
更新年数や更新回数の上限を一方的に宣言しただけでは、
いったん非正規雇用労働者に生じた契約更新に対する
合理的期待は消滅しないのです。
その結果、有期労働契約を反復継続していた途中で、
不更新条項や更新上限条項がいれられた場合には、
雇止めを争う余地がでてきます。
以上をまとめますと、有期労働契約の最初から、
不更新条項や更新上限条項が定められている場合には、
雇止めを争うのは困難ですが、有期労働契約を反復継続していた途中で、
不更新条項や更新上限条項がいれられた場合には、
会社が十分な説明をしていないといった事情があれば、
雇止めが無効になる可能性があります。
本日もお読みいただきありがとうごいます。