石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
テレワークで配慮すべき3つの労働問題のポイント
1 これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書案
新型コロナウイルスの第3波の勢いが止まらず、
12月25日の感染者数は過去最多の3,832人となりました。
新型コロナウイルスの感染が拡大している都市圏では、
テレワークを実施している企業が増えていると考えられます。
ウィズコロナ時代においては、
テレワークがますます普及していくことが予想されます。
テレワークが普及していくことに伴い、
テレワーク特有の労働問題が生じることから、12月23日、
これからのテレワークでの働き方に関する検討会が、
報告書案を公表しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000709060.pdf
この報告書案には、今後のテレワークの労働問題についての
解決の方向性を探るヒントが盛り込まれていますので、解説します。
2 テレワーク対象者の選定でのポイント
まずは、テレワーク対象者の選定の問題です。
第1波の緊急事態宣言のときに、正社員には、
テレワークは認めるものの、非正規雇用労働者には、
テレワークを認めずに、非正規雇用労働者が会社に
出勤しなければならないことが問題とされたことがありました。
コロナ禍におけるテレワークの実施については、
公共交通機関での通勤途上で、
労働者が新型コロナウイルスに感染することを防ぎ、
人の移動を少なくするという目的があります。
この目的は、正社員であろうとも、
非正規雇用労働者であろうとも、変わりません。
そして、オフィスでパソコンを使用して働く業種であれば、
正社員と非正規雇用労働者の業務内容に
それほどの差異がないことも多いです。
そのため、業務内容が同じであるにもかかわらず、
正社員にだけテレワークを認めて、
非正規雇用労働者にはテレワークを認めないことは、
パート有期法8条に違反する、
不合理な待遇の相違に該当すると考えられます。
ようするに、会社は、正社員や非正規雇用労働者といった
雇用形態の違いのみを理由として
テレワーク対象者を選定してはいけないのです。
3 テレワークにおける人事評価のポイント
次に、テレワークにおける人事評価の問題です。
人事評価は、給料に反映される可能性がありますので、
公正に実施されなければなりません。
公正な人事評価のために、会社は、
①公正・透明な評価制度を設計・開示し、
②それに基づいて公正な評価を行い、
③評価結果を開示・説明する必要があります。
テレワークの場合、実際に会社に出社した労働者が評価されて、
テレワークを実施していて、会社に出社していない労働者が評価されない、
ということはあってはならないのです。
テレワークを実施していて、会社に実際に出社していないくても、
公正に評価される、人事評価の制度を構築することが必要になります。
4 テレワークにおける労働時間管理のポイント
そして、テレワークにおける労働時間管理の問題です。
テレワークでは、会社以外の場所で働く結果、メリハリがなくなり、
テレワークの方が長時間労働に陥る可能性もあります。
また、労働者が自宅で仕事をしている場合、
仕事の合間に家事などをしていると、
労働時間の自己申告が過小になりがちです。
テレワークの場合の労働時間管理については、
原則は、労働者の自己申告でいいのですが、
長時間労働を抑制するためにも、
労働者が自己申告する労働時間が正しいかについて、
会社は、しっかりとチェックする必要があると考えます。
自宅で仕事をする以上、パソコンを使用していることが
ほとんどですので、パソコンのログを開示させるなどすれば、
労働者の自己申告する労働時間と、実際の労働時間が一致しているかを、
簡単に検証できます。
労働者としては、労働時間を過小に申告することなく、
仕事を始めた時刻と仕事を終えた時刻を正確に、
臆することなく、会社に対して、適切に自己申告するべきです。
今後は、テレワークに関するガイドラインの改訂版が
公表される予定ですので、注目していきたいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。