石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
休職から復職するには
うつ病や適応障害を発症して,
会社を長期間休職していましたが,
体調が回復し,主治医から復職しても
問題ないとの意見をもらったものの,
会社から復職はさせられないと言われたとします。
主治医は復職してもいいと言っているのに,
会社の対応には納得できません。
このような場合,労働者は復職できないのでしょうか。
本日は,休職からの復職について説明します。
そもそも,休職とは,労働者に仕事をさせることが
不能または不適当な事由が生じた場合に,
会社が労働者に対して,労働契約関係そのものは維持させながら,
仕事を免除または禁止することをいいます。
休職の中で一番多いのが私傷病休職です。
私傷病休職とは,仕事が原因ではない
ケガや病気を理由とする休職です。
例えば,プライベートの時間に負ったケガや
仕事との関連性のない病気などを理由とする休職です。
民間企業の場合,休職についての法律の規定がなく,
就業規則に休職の規定がある場合に認められる任意の制度なのです。
そのため,どのような場合に休職できるのか,
休職期間中の賃金の扱い,
休職期間満了時の効果(自然退職か解雇か),
休職と復職の手続などについては,
就業規則の規定をよく検討する必要があります。
労働者が休職からの復職を希望する場合には,
就業規則の中から復職に関する規定を検討するべきです。
さて,就業規則に「休職を命じられた職員の
休職事由が消滅したときは復職させるものとする。
ただし,休職期間が満了しても復職できないときは,退職とする。」
と規定されていた場合,労働者は,
主治医が復職を認めていることを根拠に,
復職ができるのでしょうか。
ここで,会社から休職期間満了の時点で復職不可と判断されて,
退職扱いされた労働者が,退職扱いは無効であると争った
神奈川SR経営労務センター事件の裁判例を紹介します
(横浜地裁平成30年5月10日・労働判例1187号39頁)。
この事件では,上記就業規則の「休職事由が消滅した」とは,
従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した場合
をいうと判断されました。
そして,会社の産業医が復職に否定的な意見を示していましたが,
原告の主治医がうつ状態の病状改善により
復職可能という診断書を作成していることから,
従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復している
と判断されて,復職が認められました。
復職が争われる場合,主治医の意見だけでなく,
会社の産業医の意見も重視されますが,そもそも,
主治医が復職を認めてくれないことには,復職はできません。
そこで,復職を希望する労働者は,主治医とよく相談して,
復職ができるかどうかを入念に判断してもらい,
復職可能という診断書を作ってもらい,
復職の手続をとるようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。