石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
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会社が労災保険の届出をしていなくても労働者は労災保険を利用できるのか?
先日,次のような労働相談を受けました。
仕事中に事故にあったので,会社に労災の申請をお願いしたら,
君はまだ見習いだから,君については,労災の届出をしていない
という説明を受けたという内容でした。
このように,会社が労災保険の届出をしていなかったり,
労災保険料の支払を滞納していたときに,
労働者が仕事中にけがをした場合,労働者は,
労災保険を利用することができるのでしょうか。
結論から言いますと,このような場合でも,
労働者は,労災保険を利用できます。
労働者を一人でも使用する事業主は,
会社等の法人や個人事業主の区別なく,
労災保険に加入する義務があります(労災保険法3条1項)。
そのため,会社が労災保険の届出や加入手続をしていなくても,
労働者は,当然に労災保険の適用を受けることができるのです。
このように,労災保険は,強制加入制度になっているわけです。
会社が勝手に労災保険料を支払う必要がないと考えて,
労災保険料を支払っていなかった状態で,
労働者が労災事故に巻き込まれた場合,
その労働者は,会社が労災保険料を支払っていなくとも,
当然に,労災保険の適用を求めることができます。
そして,①会社が故意または重大な過失によって
労災保険の届出をしていない期間に発生した労災事故,
②会社が労災保険料を滞納していた期間に発生した労災事故,
③会社が故意または重大な過失によって発生させた労災事故について,
国が,被災労働者に対して,労災保険の給付を行った場合,
国は,会社に対して,労災保険の給付に要した費用
に相当する金額の全部または一部を徴収することができます。
例えば,労働基準監督署から労災保険の届出をするように
指導を受けていたにもかかわらず,
会社が手続を行なわない期間中に労災事故が発生した場合,
会社が故意に手続を行なわなかったとして,
その労災事故に対して支給された保険給付額の100%が徴収されます。
また,労働基準監督署からの指導はなかったものの,
労働者を採用してから1年が経過しても,
なお労災保険の届出を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合,
会社が重大な過失によって手続を行なわなかったとして,
その労災事故に対して支給された保険給付額の40%が徴収されます。
このように,会社が労災保険の届出をしていなかったり,
労災保険料を滞納していたとしても,労働者には,
労災保険が適用されるので,労災事故に巻き込まれてしまったら,
会社に気兼ねすることなく,労災申請をするようにしてください。
その後,会社が労災保険給付について徴収されたとしても,
それは自業自得ということになるのです。
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