石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
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ドトールコーヒーの休日を減少させる就業規則の不利益変更
朝日新聞の報道によりますと,ドトールコーヒーが,
就業規則を変更し,会社の休日を暦の土日祝日などに関わらず,
年間119日に固定し,これ以上休む場合には,
有給休暇を使うように労働者に奨励しているようです。
https://www.asahi.com/articles/ASMB445ZSM9XULFA00F.html
これまでは,暦の土日祝日,年末年始(12月31日~1月3日)が
会社の休日で,年間126~127日ほどの休日があったのですが,
休日が年間119日に固定される結果,
年間7~8日ほど休日が減少してしまうようです。
今年は,ゴールデンウィークで暦の祝日が多かったり,
即位の儀式の日が祝日になったりと,休日が多かったことから,
ドトールコーヒーとしては,祝日が多い年であっても,
業務遂行上,例年並みの日数を労働者に働いてもらいたくて,
このように休日を固定したようです。
本日は,この休日の減少の問題について解説します。
まず,労働基準法35条1項により,会社は,労働者に対して,
毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。
そのため,1週間に1回休日があれば,
とりあえずは労働基準法違反にならないわけです。
また,労働基準法32条により,会社は,
1週間に40時間以上労働させてはならないことになっており,
1日の労働時間が8時間なので,多くの会社は,
土曜日と日曜日休みとする週休二日制としているのです。
ようするに,暦どおりの休日にしていれば,
労働基準法違反にならないので,
多くの会社は暦どおりの休日にしているだけであり,
日曜日や祝日を休日としなければならないという
労働基準法の義務はないのです。
この労働基準法32条と35条に違反しないのであれば,
休日をいつにするかは,会社と労働者の合意で決まります。
労働基準法89条1号により,就業規則に休日について
記載しなければならないので,
いつが会社の休日になるのかについては,
通常は,就業規則に記載されています。
そして,休日が減少することは,労働者にとって不利益なことですので,
会社は,不利益を被る労働者が休日の減少に合意するか,
労働契約法10条に規定されている
就業規則の不利益変更の要件を満たす必要があります。
就業規則を変更することで,労働条件を不利益に変更するためには,
①労働者の受ける不利益の程度,
②労働条件の変更の必要性,
③変更後の就業規則の内容の相当性,
④労働組合等との交渉の状況
などの要件が総合考慮されます。
ドトールコーヒーの事例の場合,①休日が減少するのですが,
有給休暇を取得することで暦どおりに休めることから,
賃金が減額されるときに比べて労働者の受ける不利益は
そこまで大きくはないと裁判所は判断するかもしれません。
もっとも,②休日を減少させなければならないほどの
業務上の必要性がどこまであるのか不明ですし,
③休日を減少させる代わりに他の労働条件を改善するなどの
代替措置を導入する必要があり,
④労働組合等に対してしっかりと説明していなければなりません。
そのため,事情によっては,ドトールコーヒーの休日を減少させる
就業規則の変更は,労働契約法10条の要件を満たしていないとして
無効になる可能性があるかもしれません。
働き方改革で,1年間に年次有給休暇を5日取得させることが
義務となり,労働者をなるべく休ませる方向に
時代の流れが動いている状況なので,私個人としては,
休日を減少させる就業規則の不利益変更に違和感を覚えています。
本日もお読みいただきありがとうございます。