石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
労働時間を過小に自己申告してもパソコンのログデータで労働時間が認定される
1 自己申告の労働時間とパソコンのログデータから導かれる労働時間が異なる問題
私が現在担当している未払残業代請求の裁判において,
労働者の自己申告によって労働時間
特定してもよいかが争点となっています。
労働者が会社に対して,業務日報を提出しており,
そこに記載されている労働時間を用いるべき,
と会社側は主張しています。
他方,労働者は,上司から残業の申請を減らして,
調整するように指示を受けていたので,会社に対して,
実際の労働時間よりも少な目に労働時間を申告していました。
そして,労働者は,自己申告の労働時間ではなく,
労働者が使用していたパソコンのログデータで
労働時間を認定すべきと主張しています。
おそらく,労働時間を自己申告制にしている会社では,
労働者が過小に労働時間を自己申告しているケースは多いと思います。
このように,労働者が自己申告した労働時間と,
パソコンのログデータから導かれる労働時間とが異なる場合,
どちらの労働時間が認められるのでしょうか。
結論は,パソコンのログデータから導かれる労働時間が
認められることになります。
2 労働時間把握義務
まず,改正労働安全衛生法66条の8の3において,会社は,
労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されています。
これを労働時間把握義務といいます。
労働安全衛生規則52条の7の3において,
会社の具体的な労働時間の把握の方法として,
「タイムカードによる記録,パーソナルコンピュータ等の電子計算機の
使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする」
と規定されています。
要するに,会社は,原則として,
タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録で,
労働時間を把握しなければならないのです。
3 労働者の自己申告によって労働時間の把握が認められる場合
次に,タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録ではなく,
労働者の自己申告による労働時間の把握も,例外として認められています。
しかし,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,
厳しい制限が課されています。
その厳しい制限については,基発1228第16号平成30年12月28日の
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による
改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」
と題する通達に規定されています。
具体的には,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるのは,
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に限られます。
そして,会社がパソコンの使用時間などのデータを有する場合に,
自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは,
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には当たらず,
認められません。
また,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,
会社は,自己申告により把握した労働時間の状況が,
実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて,
必要に応じて実際調査を実施し,
所要の労働時間の状況の補正をしなければなりません。
したがって,労働者の自己申告による労働時間の把握が
認められる余地は限定されており,
パソコンの使用時間で労働時間が把握できる場合には,
労働者の自己申告による労働時間の把握は認められないのです。
そのため,労働時間を過小に自己申告していても,
パソコンのログデータから導かれる労働時間が労働者に有利であれば,
労働者は,パソコンのログデータで労働時間を認定して,
残業代を請求すればいいのです。
本日もお読みいただきありがとうございます。