石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
高度プロフェッショナル制度はどのような労働者に適用されるのか?
今年の6月に成立した働き方改革関連法の中で,
一番問題があったのが高度プロフェッショナル制度
(高プロといいます)です。
高プロは,高い年収をもらっている一部の専門職の労働者について,
労働時間規制を外すという制度です。
労働基準法では,1日8時間以上,
1週間で40時間以上働かせてはならず,
これを超えて働かせるのであれば,企業は,
労働者に残業代を支払わなければなりません。
また,休日に働かせたり,
午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に働かせた場合には,
企業は,労働者に割増賃金を支払わなければなりません。
これが労働時間規制です。
高プロでは,この労働時間規制が外される結果,
どれだけ働いても残業代はゼロとなり,
長時間労働が助長されて,過労死が増えるリスクがあります。
そのため,高プロは,残業代ゼロ法案,
過労死促進法案として,批判されてきました。
しかし,残業代の支払いを削減したい
経済界の意向が反映されたのか,残念ながら,
高プロは成立してしまいました。
高プロの法律が成立したのですが,
高プロの対象者となる労働者は具体的にどのような労働者なのかは,
これからの労働政策審議会での議論を経て,
厚生労働省令で定められます。
まず,高プロの対象となる業務ですが,
法律では「高度の専門的知識等を必要とする」とともに
「従事した時間と従事して得た成果との関連性が
通常高くないと認められる」という性質の業務と規定されています。
これを読んだだけでは,どのような業務が
対象になるのかがさっぱり分かりません。
ということは,高度の専門的知識という言葉が拡大解釈されたり,
時間と成果の関連性が高くない仕事も多くあるわけなので,
高プロの対象業務がどんどん拡大されていくおそれがあります。
あいまいな言葉で法律が作られると,
権力者にとって都合のいいように拡大解釈される危険があるのです。
次に,年収要件ですが,法律では,
「1年間に支払われると見込まれる賃金の額が,
平均給与額の3倍を相当程度上回る」水準と規定されています。
ここで,平均給与額とは,厚生労働省の毎月の勤労統計をもとに
算定される,労働者1人あたりの給与の平均額のことです。
この厚生労働省の勤労統計の調査対象者には,
年収の低いパート労働者などが含まれています。
年収が低い労働者が含まれる結果,
平均すると給与額が低くなり,平均給与額の3倍の金額も低くなります。
そうなると,年収要件が低くなり,
高プロを適用される労働者が増えていくことになるのです。
今は,年収1075万円以上の労働者が対象となるかが
議論されていますが,統計の数値は変化していくので,
年収要件がどんどん低くなって,高プロの対象者が
拡大されていくのではないかが懸念されています。
そもそも,対象者をどの範囲にするかという重要な議論が,
国会審議なしに,国民の目が行き届かない
諮問機関でなされているのがおかしな話です。
来年4月から高プロが導入されるのですが,
労働者の方々は,高プロにくれぐれも気をつけてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。