石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
解雇をされたら離職票を確認しましょう
先日,次のような労働事件の法律相談を受けました。
入社してまだ12日ほどしか経っていないにもかかわらず,
突然,「荷物をまとめて退職してください。」と告げられました。
相談者は,突然のことにショックを受けて,パニックになり,
次の日から出社することができなくなりました。
相談者は,この解雇に納得できないとして,
私のところへご相談にいらっしゃいました。
相談者は,解雇であることを前提にしていらっしゃったので,
私も解雇についてアドバイスをしていましたが,
私が,相談者に対して,「離職票を見せてください」と言って,
離職票を見たところ,離職理由には
「退職勧奨による退職」と記載されていました。
離職票には離職理由にチェックを入れる箇所があり,
解雇の場合であれば,離職理由の
「4事業主からの働きかけによるもの」のうちの
「(1)解雇(重責解雇を除く。)」にチェックが入るはずです。
(離職票)
しかし,この相談者のケースでは,離職理由の
「4事業主からの働きかけによるもの」のうちの
「(3)希望退職の募集又は退職勧奨」の「[2]その他」として,
その理由の欄に「退職勧奨による退職」と記載されていたのです。
相談者は,私に指摘されるまで,
離職票の離職理由に気付いていませんでした。
転職活動がそれほどさかんではない日本では,
離職票を見る機会があまりないので,
初めて離職票を受け取ったときに,
どのようにチェックすべきかわからないのがほとんどだと思います。
幸いにして,相談者は,まだ離職票をハローワークに
提出していませんでしたので,会社に対して,
この離職票の離職理由を訂正してもらうように通知書を送りましょう
とアドバイスをして,通知書を送りました。
ここでもし,相談者が,会社から送られてきた離職票を
そのままハローワークに提出していたとしたら,会社は,
解雇ではなく,退職勧奨に応じて自己都合退職したのだと
主張してくるおそれがありました。
解雇であれば,よほどの理由がないと,
会社は労働者を解雇できないので,
解雇を争えば,解雇が無効となり,
解雇された以降の未払い賃金を請求できる可能性が高くなります。
他方,自己都合退職の場合,自分から勝手に辞めたことになるので,
辞めた後に賃金を請求することができず,
会社に対して,金銭的な請求ができません。
また,自己都合退職ではなかったことを争う場合,
会社からだまされたり,おどされたり,勘違いして
自己都合退職をしてしまったと,
労働者が証明しなければならず,
労働者の主張が認められるとは限りません。
このように,解雇であれば,労働者は争いやすく,
自己都合退職であれば,労働者は争いにくいのです。
このことを理解している悪賢い会社であれば,
本当は解雇であっても,離職票に自己都合退職と記載して,
労働者がこれに気づかずにハローワークに提出した後に,
労働者が解雇で争ってきた時に,
自己都合退職だったと反論してくることがあります。
解雇されたのか否かが争点になることがありますので,
会社から「解雇する」と言われたのか,
「辞めてくれないか」と言われたのかなど,
どのような伝え方をされたのかや,
相談者がどのように対応したか等,
慎重に検討をする必要があります。
そして,会社から離職票を受け取ったときには,
離職票の離職理由をよく確認して,
事実と異なる記載がされていたら,
会社に対して,すぐに訂正を求めるようにしてください。
会社が訂正に応じないのであれば,離職理由の箇所に
「離職者記入欄」がありますので,
そこに自分が考える離職理由の箇所にチェックをいれてください。
また,離職理由の下のほうに,
「具体的事情記載欄(離職者用)」という欄がありますので,
そこに事実に合致した離職理由を具体的に記載し,
「離職者本人の判断」の箇所に,
「事業主が記入した離職理由に異議が有る」に○を囲みましょう。
その上で,離職票をハローワークに提出すれば,
自己都合退職に応じたとは認められないと思います。
さて,先ほどの相談者のケースでは,
離職票の離職理由を訂正することを求める通知書を会社に送ったところ,
会社はこれに応じて,解雇であることを認めてくれましたので,
相談者は,会社と争いやすくなったので,よかったです。
本日もお読みいただきありがとうございます。