石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
未払残業代423万円を回収した退職代行事件
1 退職代行の法律相談
クライアントは、勤務先の会社で、ハラスメントを受けて、うつ病を発症して休職していました。
休職中であるにもかかわらず、会社からは、在宅で対応可能な業務の指示がなされ、クライアントは、やむなく対応していました。
クライアントは、60歳定年が近く、60歳定年までは、休職を継続し、会社からの業務指示を回避したいという要望で、私のもとへ法律相談にいらっしゃいました。
クライアントの法律相談を聞いていますと、毎月一定程度の残業をしているにもかかわらず、残業代が1円も支払われていませんでした。
そこで、60歳定年になるまで休職を維持しつつ、60歳定年で退職し、あわせて、未払残業代を請求することとしました。
2 休職期間中の交渉
まずは、60歳定年になるまで、休職を維持するために、弁護士が代理人として、会社と連絡をとりました。
休職期間中は、賃金が支払われませんので、傷病手当金を受給します。
傷病手当金を受給するためには、必ず、会社から、休業の証明をもらわなければなりません。
ひどい会社であれば、意図的に、傷病手当金の申請書に、会社の証明をしないという対応をしてくる場合があります。
このような対応をされると、傷病手当金を受給できず、休職期間中の収入を確保できず、生活が困窮します。
そのため、会社に、傷病手当金の申請書に、証明をしてもらうために、対応を考えます。
幸い、今回のケースでは、難なく、傷病手当金の申請書に証明をもらうことができました。
次に、年次有給休暇が1ヶ月分ほど残っていたので、60歳定年で退職する1ヶ月前から、年次有給休暇を消化しました。
年次有給休暇が残っている場合には、退職する前に全て消化してしまうのが効果的です。
そして、クライアントは、60歳定年のタイミングで、会社を退職し、すぐに次の仕事に就職して、収入が途切れることを回避できました。
会社を退職するためには、退職日の2週間前までに、退職届を提出し、その後、2週間が経過すればいいのです。
会社を退職するのに、理由はいりません。
会社を退職するまでの2週間、年次有給休暇を取得すれば、会社に出勤することなく、自由に、会社を退職することができるのです。
3 未払残業代請求
さて、退職と同時に、会社に対して、未払残業代を請求しました。
幸い、クライアントの手元に、労働時間が記録された業務日報がありましたので、労働時間の証拠を確保することについて悩む必要はありませんでした。
業務日報をもとに、残業代を計算したところ、残業代の元金が396万円となりました。
残業代には、遅延損害金がつきます。
退職する日までは、年3%、退職日後には、年14.6%の遅延損害金がつくのです。
この低金利の時代に、かなりの利息がつくわけです。
そのため、残業代の未払の期間が長ければ長いほど、もらえる金額が大きくなるのです。
そして、裁判をすれば、判決がでるまで、平均して1年間はかかるので、私は、未払残業代がある程度確保できる事案では、裁判を提起しています。
今回の事件でも、未払残業代の消滅時効である3年が経過する前に、裁判を提起しました。
すると、意外なことに、相手方の会社は、裁判の第1回期日前に、和解で事件を解決したいと言ってきました。
そこで、相手方の会社と交渉した結果、未払残業代の元金と遅延損害金を加えた合計423万円を支払ってもらうことで、和解が成立しました。
このように、会社から残業代が支払われていない場合には、退職するタイミングで、会社に未払残業代を請求するのがおすすめです。
会社で働いている時には、残業代を請求しにくいのですが、退職した後であれば、会社に気兼ねなく、残業代を請求できます。
退職するタイミングで、残業代を請求したい場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
今回も最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。