石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
労災保険の特別加入制度
労災事故に巻き込まれたので,会社に労災の申請を依頼したところ,
会社からは,君は労働者ではないので,労災保険は使えないと言われて
困っていますという法律相談を先日受けました。
相談者の方は,会社との間で,労働契約ではなく,
業務委託契約を締結しているので,会社は,
相談者の方について,労災保険料を支払っていないようです。
このような場合,業務委託契約を締結していても,
勤務実態をみてみると労働者と評価できる場合には,
労災保険法が適用される可能性があります。
もう一つ,労災保険の特別加入制度を利用するという方法もあります。
本日は,労災保険の特別加入制度について説明します。
特別加入制度とは,労働者以外の者であっても,
労働者に準じて労災保険の保護を与えるにふさわしいとされる者について,
労災保険の目的を損なわず,業務上・外の認定など
保険技術的に可能な範囲で,労災保険の適用をはかることとした制度です。
中小企業の事業主や,一人親方,自営業者などが対象です。
労働者にとっての労災保険は事業主において
強制加入することとされており,
労働者が加入手続などをする必要はないのですが,
特別加入制度は,事業主や,一人親方,自営業者
などが自分で加入手続をとる必要があります。
特別加入制度を利用するための手続きについては,
加入者が従事している業務内容に応じて窓口が設けられており,
その窓口を通じて特別加入申請書を労働基準監督署へ提出し,
各都道府県労働局長の承認を受けることが必要になります。
特別加入制度に加入した者が,仕事中に負傷したり,
通勤の途中で負傷した場合,治療費,休業補償,障害補償,遺族補償など,
通常の労災に準じた種類の給付を受けられます。
もっとも,特別加入の場合,各種給付の給付額を算定する
基礎となる給付基礎日額の決定方法が,
通常の労災の場合とは異なり,特別加入申請の際に,
加入者自身が所得水準に見合った適切な金額を選択して申請し,
都道府県労働局長が承認した金額が給付基礎日額となるのです。
ですので,仕事中に怪我を負う危険の高い業務をする
中小企業の事業主,一人親方,自営業者は,
特別加入制度を利用して,もしものときに備えるべきだと思います。
また,特別加入制度を利用していたとしても,
仕事中に怪我をしたときの具体的な契約内容や
就労実態からして労働者と認められる場合には,
特別加入制度ではなく,通常の労災補償を受けられるときがあります。
特別加入制度で定めた給付基礎日額よりも,
通常の労災補償の給付基礎日額の方が高い場合には,
労働者であるとして,通常の労災保険給付の
請求をしてみるのがいいと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。