石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
よろしくお願いします。
休職後のリハビリ勤務中の解雇の有効性
昨日に引き続き,近年,精神疾患による休職と復職に関して
重要な裁判例が出されていますので,本日は,
リハビリ出勤中の解雇が争われた綜企画設計事件を紹介します
(東京地裁平成28年9月28日判決・労働判例1189号84頁)。
この事件では,原告の労働者がうつ病で休職し,
その後リハビリ勤務をしていたのですが,
リハビリ勤務中に休職期間満了を理由とする解雇をされたことから,
原告の労働者は,解雇が無効であるとして裁判を起こしました。
リハビリ勤務とは,休職から復職を果たすために,
復職した当初から本来の所定労働時間における労働を行う
フルタイム勤務を課すのではなく,1日2,3時間ほど,
あるいは1日5,6時間ほどの短時間勤務を経て,
フルタイムの勤務を目指して徐々に
労働者に負荷をかけていくものです。
このリハビリ勤務ですが,以前は,休職から復職を果たした後に
実施されるケースが多かったのですが,最近は,
休職期間中に実施するケースが増えてきているようです。
リハビリ勤務の開始によって復職したといえれば,
復職後の解雇が権利の濫用といえるのかが争点となり,
リハビリ勤務の開始によって復職していないとなれば,
休職期間満了時において休職原因が消滅していたのかが争点となり,
争い方が変わってきます。
一般論としては,休職期間満了時において
休職原因が消滅していたことを,
労働者が証明しなければならないとされていることから,
リハビリ勤務によって復職していた方が,
解雇は簡単にできないということで,
労働者にとって有利といえそうです。
本件事件では,リハビリ勤務は,休職期間を延長し,
労働者が復職可能か否かを見極めるための期間
という趣旨で行われていたとされて,
リハビリ勤務の開始によって,
原告の労働者が復職したことにはならないと判断されました。
リハビリ勤務の開始では,復職したことにはならないので,
原告の労働者としては,休職期間満了時に,
原告の労働者に休職原因が消滅して,
復職ができていたことを証明しなければなりません。
それでは,どのような場合に,
休職原因が消滅したといえるのでしょうか。
それは,基本的には従前の職務を通常程度に
行うことができる状態にある場合をいいます。
また,それに至らない場合であっても,
当該労働者の能力,経験,地位,
その精神的不調の回復の程度などに照らして,
相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を
遂行できる程度に回復すると見込める場合も含まれます。
そして,これらの判断をする際には,
休職原因となった精神的不調の内容,
現状における回復程度ないし回復可能性,
職務に与える影響などについて,
医学的な見地から検討することが重要になります。
本件事件では,原告労働者は,リハビリ勤務中,
遅刻,早退などなく,リハビリ勤務の予定通りに
出社と退社をしており,多少の能力の低下はあったものの,
本人の努力次第で能力が戻ることが予想されていたことから,
従前の業務を通常程度行うことができる状態になっていたか,
少なくとも相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に
回復すると見込まれる状況にあったと判断されました。
その結果,休職期間満了時において,
休職原因が消滅していたので,復職が認められて,
解雇は無効となりました。
休職からの復職を求めるケースでは,
主治医の意見などを参考に,
リハビリ勤務中にどのような作業をどこまでできていたかを検討し,
相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に
回復すると見込めることを主張立証していくことが重要になります。
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