石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
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会社は労働者からの年次有給休暇の取得を拒否できるのか~年次有給休暇の時季変更権~
1 会社から年次有給休暇の取得を認められなかったケース
会社に年次有給休暇の申請をしたところ,
今会社の業務が忙しいので年次有給休暇の取得は認められない
と言われて困っています,という法律相談を受けました。
このような会社の対応は認められるのでしょうか。
本日は,年次有給休暇の時季変更権について解説します。
2 年次有給休暇を取得するには
まず,労働者は,6ヶ月以上継続勤務し,
全労働日の8割以上出勤すれば,
10日以上の年次有給休暇を取得できます。
労働者が,年次有給休暇を取得しようと考えたなら,
会社に対して,労働者が有する年次有給休暇の日数の範囲内で
具体的な年次有給休暇の始期と終期を特定して会社に通知するだけで,
年次有給休暇は成立します。
会社から年次有給休暇を取得することの承認をもらう必要はありません。
これを労働者の年次有給休暇の時季指定権の行使といいます。
3 会社による時季変更権の行使
これに対して,会社は,労働者がその時に年次有給休暇を取得すると,
「事業の正常な運営を妨げる場合」があれば,
労働者が指定した時ではなく,
別の日に年次有給休暇を取得させることができます。
これを,会社の時季変更権といいます。
年次有給休暇をめぐる裁判では,
この「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかが争点となります。
この「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するには,
①当該労働者が属する課・班・係など相当な単位の業務において
必要人員を欠くなど業務上の支障が生じるおそれがあることが必要です。
加えて,②人員配置の適切さや代替要員確保の努力など
労働者が指定した時季に年次有給休暇が取得できるように
会社が状況に応じた配慮を行っていることが必要です。
具体的な事例をみてみましょう。
年次有給休暇の時季変更権が争われた西日本JRバス事件の
名古屋高裁金沢支部平成10年3月16日判決を紹介します
(労働判例738号32頁)。
この事件は,当事務所の菅野弁護士,
飯森弁護士,宮西弁護士が担当しました。
この事件では,恒常的な人員不足に基づく人員配置が行われ,
常に代替要員確保が困難な状況にある場合には,
いかに代替要員の確保が困難・不可能であっても,
会社は適切な人員配置を欠いていたとして,
会社の時季変更権の行使は違法と判断されました。
そして,7日分の年次有給休暇を取得できる権利を失効させたことは,
労働契約に違反しているとして,25万円の慰謝料請求が認められました。
このように,会社には,適切な人員配置,
代替要員確保の努力などを含め,
できる限り労働者が指定した時季に年次有給休暇を取得させるように
状況に応じた配慮を行うことが求められているのです。
そのため,単に,会社の業務が忙しいとった理由のみでは,
会社の時季変更権は適法にならず,労働者は,
自分が指定した時季に年次有給休暇を取得できます。
仮に,会社に年次有給休暇の取得を妨害されたのであれば,
慰謝料の損害賠償請求をすることを検討します。
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