過労死防止対策と高度プロフェッショナル制度の矛盾
5月31日,政府は,新たな「過労死防止大綱」の最終案を発表しました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000209413.html
過労死防止大綱は,過労死ゼロの実現を目指す
政府の基本方針を示すもので,厚生労働省の施策の土台となるものです。
この過労死防止大綱を読むと,日本人の働き方がよくわかります。
月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は,
平成29年は7.7%で432万人となっています。
個人的な感覚としては,月末1週間の就業時間が60時間を
超えている労働者の割合は,もっと多いような気がします。
政府は,週労働時間60時間以上の雇用者の割合を平成32年までに
5%以下にする目標を掲げているので,まだ達成できていません。
次に,勤務間インターバル制度について,
導入している企業が1.4%,
導入を予定しているまたは検討している企業が5.1%,
導入の予定はなく,検討もしていない企業が92.9%となっています。
勤務間インターバル制度とは,
勤務終了から次の勤務開始までの間に
十分な休息時間を確保するというものです。
1日の労働が終了して,次の労働が始まるまでの間に,
十分な休息時間を確保することで,長時間労働を抑制して,
労働者の疲労を回復させ,ワークライフバランスを確保できるようになります。
この勤務間インターバル制度については,
周知が不十分なのか,
導入企業がわずか1.4%しかありません。
そこで,政府は,平成32年までに
勤務間インターバル制度を導入する企業の割合を
10%以上
とする目標を掲げました。
医療,介護,運送業など夜働く業界の場合,
夜働くことで睡眠バランスが崩れて,
疲労が蓄積しやすいので,
労働者保護の観点から勤務間インターバル制度が必要であると思います。
また,勤務間インターバル制度における休息時間ですが,
睡眠以外にも家族と団らんする時間を確保するためにも,
ヨーロッパで導入されている11時間以上が必要です。
休息時間が短い「名ばかり」勤務間インターバル制度
が導入されないようにチェックする必要があります。
過労死防止の観点から,早急に多くの企業で
勤務間インターバル制度が導入されることを願います。
その他にも,年休の取得率約50%を平成32年までに70%以上にし,
年休取得数が0の労働者を解消する目標も掲げられています。
過労死を防止するための対策が具体的数値と共に記載されており,
過労死をなくすための意気込みを感じますが,一方で,
5月31日に高度プロフェッショナル制度を含む
働き方改革関連法案が衆議院を通過しました。
何度もブログで投稿してきましたが,高プロは,
労働時間の規制を撤廃して,過労死を助長する制度です。
過労死防止対策をすすめながら,
一方で過労死を助長する高プロを導入するので,
政府の対応に矛盾を感じます。
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