石川県金沢市の労働弁護士徳田隆裕のブログです。
未払残業・労災・解雇などの労働事件を中心に,
法律問題を分かりやすく解説します。
労働者の方々に役立つ情報を発信していきますので,
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会社が休業したときに請求できるのは平均賃金の6割以上の休業手当か賃金の満額か
1 大庄が休業手当を支払わない問題
居酒屋「庄や」などを経営する大庄で働くアルバイトの男性が、
10割の休業手当の支払を求めて、団体交渉を申し入れたようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/593a1eb9f0cad932d79bad6939997ed3161b87fd
5月の緊急事態宣言下の休業期間中に休業手当が支払われておらず、
8月3日から東京都から営業時間短縮の要請があり、
8月にシフトが大幅にカットされたのに、
休業手当が支払われていないようです。
報道によりますと、大庄は、
使用者の責に帰すべき事由により休業したわけではないので、
休業手当を支払う義務はないと主張しているようです。
このような場合に、休業手当が支払われなくてもよいのでしょうか。
結論としては、休業手当が支払われるべきと考えます。
2 緊急事態宣言下の休業の場合
まず,緊急事態宣言下における休業については、
パチンコ店のように、都道府県知事の休業指示に従わなかったら、
公表される場合以外の休業であれば、労働基準法26条に基づき、
平均賃金の6割以上の休業手当を請求できると考えます。
公表までいかない要請に応じて休業した場合は、
会社の経営判断に基づくもので、不可抗力とはいえないので、
平均賃金の6割以上の休業手当を請求できると考えます。
場合によっては、10割の賃金の支払を受けられることもあります。
3 緊急事態宣言終了後の休業の場合
次に、緊急事態宣言は終了した後も、都道府県知事は、
休業の要請ができるのですが、
これに応じるかは会社の判断に任せられます。
この場合、会社は、労働者に働いてもらうことが可能であるのに、
自らの判断で休みにしているので、
労働基準法26条の休業手当を支払わなければなりませんし、
民法536条2項の「責に帰すべき事由」があるとして、
10割の賃金を支払わなければなりません。
労働者としては、最低でも、平均賃金の6割の休業手当の請求を、
できれば、10割の賃金の支払をしてもらえるよに交渉すべきです。
そのため、大庄は、休業期間であっても、
最低でも平均賃金の6割の休業手当を、
場合によっては、10割の賃金を支払うべきなのです。
4 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
それでも、会社が休業手当を支払わない場合に、
労働者を保護するための制度として、
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
という制度が新設されました。
この制度は、会社が休業したのに、
労働者に休業手当を支払っていない場合に、
国が労働者に対して、休業前賃金の8割を支払うというものです。
労働基準法26条の6割の休業手当よりも手厚いです。
ただ、この休業支援金を受給できるのは、
中小事業主に雇用される労働者だけです。
大企業の労働者に休業手当が支払われない場合には、
利用できないのです。
中小事業主とは、飲食店を含む小売業の場合、
資本金の額が5000万円以下で、
常時雇用する労働者の数が50人以下、
サービス業の場合、資本金の額が5000万円以下で、
常時雇用する労働者の数が100人以下をいいます。
大庄は、資本金の額が5000万円を超えている、若しくは、
常時雇用ひる労働者の数が50人を超えていると考えられ、
中小事業主ではないため、大庄が、休業手当を支払わなかった場合に、
労働者は、休業支援金を受給できないのです。
制度ができたときは、大企業は、
休業手当をきちんと支払うだろうという予測がはたらいたと思いますが、
現実には、大企業でも、休業手当が支払わていないのです。
そのため、大企業が休業手当を支払わない場合でも、
休業支援金が支給されるように制度を改善する必要があると思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。